最新技術で保守の省人化を

 今後、全国各地で人口減と過疎化が進み、赤字路線は増えていくだろう。かつて国鉄だった成り立ちもあってJRは通常の民間会社とは異質の公共性を帯びており、単純に不採算事業を切り捨てるわけにはいかないのだ。

 鉄道運賃については国交省による総括原価方式の上限認可制があり、JR各社が収益向上のために運賃を上げるのは容易ではない(編集長インタビュー)。国交省の奥田哲也・鉄道局長は、「今後も総括原価方式の上限認可制を続けていくだろう」と話す。

 JR各社はローカル線を維持することをCSR(企業の社会的責任)と位置づけ、CSRの範囲内で支えていくしかない。CSRを続けるためには、稼ぐ力を強化することが不可欠だ。

 確かにパート1で見たように、JR各社は稼ぐ力に課題を抱えているが、改革の萌芽もある。今後30年を見据えて、いくつかの萌芽を育てていけば、稼ぐ力を高められる。

 その一つは技術開発だ。好例がJR東海の東海道新幹線であり、積極的な設備投資と高速化を進めてきた。同社はさらに超電導リニアの実用化というイノベーションを起こそうとしている。葛西敬之名誉会長は「中国などで導入されている常電導リニアとは全く別物で、世界初の技術になる」と語る。

 ただし大規模プロジェクトだけがイノベーションではない。人手不足が進む中で、「今後はカメラやセンサーを使った安全対策の省人化技術にも期待している」(国交省の奥田局長)。

<b>JR東日本が2015年に導入した新型車両「E235系」。車両にセンサーなどを載せ、運転しながら線路状況などを調べる</b>(写真=HIROYUKI OZAWA/アフロ)
JR東日本が2015年に導入した新型車両「E235系」。車両にセンサーなどを載せ、運転しながら線路状況などを調べる(写真=HIROYUKI OZAWA/アフロ)
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 実際、JR西日本は路線の保守点検について省人化技術の研究を進めている。2008年に測量や地図情報システムで高度な技術を持つアジア航測に出資した。これまでは鉄道の線路や周辺斜面に変化があるか否かを、作業員が線路を歩いて目視で点検するケースが多い。膨大な労力と負担がかかるため、機械化のニーズが高い分野だ。同社はアジア航測と共同で、鉄道に計測装置を載せて線路や斜面を計測。従来のデータと重ね合わせることで、異常を検知する技術の開発を続けている。

 また、JR東日本は2015年、山手線に新型車両「E235系」を導入した。これは新しいメンテナンスシステムも担う。車両にカメラやセンサーを載せ、運転しながら線路や架線の状況を調べているのだ。ドアやブレーキなど機器の状態のデータとともに、無線でメンテナンスセンターに送信し、いち早く異常を探知するシステムだ。

 さらにJR九州は究極の目標に挑む。「在来線で無人運転を実現しよう」。2月13日、鉄道事業本部の部長会議で、本部長である古宮洋二常務は宣言した。我こそはという社員を集めて、2年で研究を重ね、3年後の実現を目指すという。「踏切の安全など克服すべき課題はあるし、時間はかかるかもしれない。だが、自動運転車が実現する時代に鉄道もできることはあるはずだ」と意気込む。

 2つ目は街づくりだ。

<b>JR東日本が2020年に開業する品川新駅(仮称)の予定地。品川駅と田町駅の間に建設する。住宅や国際会議場などを含めた街づくりを手掛ける</b>(写真=共同通信)
JR東日本が2020年に開業する品川新駅(仮称)の予定地。品川駅と田町駅の間に建設する。住宅や国際会議場などを含めた街づくりを手掛ける(写真=共同通信)
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 2月10日、JR東日本は山手線の品川駅~田町駅間に建設する新駅(東京都港区)の起工式を開いた。開業は2020年で山手線の新駅は、実に半世紀ぶりとなる。新駅が珍しいだけではなく、このプロジェクトは従来の同社の事業領域を大きく超えるものとなる。

 これまで同社の開発と言えば駅ビルが中心だった。だが今回は、約5000億円を投じ、13ヘクタールにも及ぶ駅周辺の街全体を開発する。オフィスや住宅のほか、国際会議を開けるような街づくりを目指す。こうした開発では私鉄が先行しているが、JR東日本は遅ればせながら街づくりを主導し、そのノウハウを国内外で生かしていく。

 3つ目は、総合交通サービスである。国交省の奥田局長は、「地域によっては鉄道にこだわらず、バスなどに切り替えた方が本数が増えるなどのメリットがある」と柔軟な姿勢を見せる。既にローカル線を廃線する際には、鉄道に代わって自家用車のシェアリングサービスなどが検討されている地域がある。

 今後30年を見た場合には、人口が密集する都市部でも効率的な交通サービスの一環として、自動運転車が使われることもあり得る。そうなれば自動車会社やIT会社、鉄道会社が、交通サービスを巡って競争関係になる。

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