「我々は日本全体を考えるポジションにいる」。経産事務次官となって2年目の菅原郁郎はそう言う。活躍の舞台は広がっている。が、顔つきはいまいちさえない。なぜなのか。
「何もかも課長連中に任せていたらダメだ」
「君たちがもっと下から突き上げなきゃ」
金曜日の夜。経済産業省本館11階の事務次官室から熱を帯びた低い声が漏れてくる。長テーブルに広げられた缶ビールや乾き物の数々。最初は夕日が淡く室内を照らしていたが、気づいたら窓の外は闇に包まれている。

菅原郁郎
長テーブルを囲んで座る課長補佐以下の若手経産官僚たちは神妙な表情を浮かべ、事務次官の菅原郁郎(1981年入省、以下カッコ内は入省年)の言葉に耳を傾ける。誰もほとんど手を伸ばさないため、ビールの泡は消え、生ぬるい琥珀色の液体が鈍く光る。ワインも栓を開けた状態のまま。
そんなおとなしい様子を横目で見た菅原は、少しいら立ったように語気を強めた。「日本の強みは何なんだ。それを君たちが考えないで誰が考えるんだっ」。
2015年7月の次官就任以降、菅原は20代後半~40代前半の若手官僚を毎週5、6人ずつ呼び出し、直接話を聞く機会を持った。事務方の最高位である次官が若手と膝を交えるのは極めて異例のこと。会の出席者は延べ100人を超えた。
そこで菅原は強烈な危機感に襲われることになる。
「僕らが若かった頃、通商産業省(当時)には日本をどうするかという大きな問題意識があった。でも今の若手は極めて狭い視野で経産省のミッションをとらえている。『経産省はこうあるべき』という仕事の枠を勝手に限っているんだ」
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