ソニーは「平井改革」で業績を大きく立て直したが、経営環境は激変している。「チーム吉田」が越えなければならない壁は高い。それは他ならぬソニー自身との戦いでもある。

「チーム吉田」でソニーを導く
●4月1日以降の主な経営幹部
代表執行役 社長兼CEO <span class="title-b">吉田憲一郎氏 </span>(58歳)
代表執行役 社長兼CEO 吉田憲一郎氏 (58歳)
財務部門が長く、出井伸之氏が社長だった時代には社長室長を務めた。ソネット社長として株式上場を果たしたが、同社の完全子会社化を機にソニー本体に復帰した。(写真=竹井 俊晴)
会長 <span class="title-b">平井一夫氏 </span>(57歳)
会長 平井一夫氏 (57歳)
今後は代表権のない会長として吉田氏を支える。何かと多忙な新社長に代わり、国際会議などをカバーする。(写真=竹井 俊晴)
代表執行役CFO <span class="title-b">十時裕樹氏 </span>(53歳)
代表執行役CFO 十時裕樹氏 (53歳)
ソネット時代からの吉田氏の右腕。ソニー銀行設立を主導した経歴を持つ。直前までCSO(最高戦略責任者)を務めており、引き続き参謀としてソニーをけん引する。(写真=時事)
執行役 <span class="fontBold">高木一郎氏 </span>(59歳)
執行役 高木一郎氏 (59歳)
長くAV部門を歩み、テレビ事業の黒字化を主導。(写真=共同通信)
執行役 <span class="fontBold">石塚茂樹氏 </span>(59歳)
執行役 石塚茂樹氏 (59歳)
モバイル部門の収益向上に挑む。(写真=朝日新聞社)
執行役 <span class="fontBold">勝本 徹氏 </span>(60歳)
執行役 勝本 徹氏 (60歳)
オリンパスと協業する医療事業を担当し、4月からは研究開発部門のトップとなる。(写真=朝日新聞社)

 これが“平井流”のバトンの渡し方だったのかもしれない。

 2月2日の社長交代会見。記者からの質疑応答とカメラマンの写真撮影を終え、後任となる吉田憲一郎副社長と会場を出る際、平井一夫社長は道を譲ろうとした吉田氏の背中をそっと押して、先に歩むよう促した。苦悩の時期を乗り越え、改革を指揮してきた平井氏が、名実ともに“後進に道を譲った”瞬間だった。

 「ポジションが変わる時に一番大事なのは、誰がこの会社のリーダーなのか社内外に明らかにすることだ。ソニーグループは4月1日から、トップの吉田さんと彼のチームで経営する」。交代会見の席で、平井氏はこの言葉にことさら力を込めた。

 20年ぶりの営業最高益更新を確実にし、稼ぐ力を取り戻したソニー。2015~17年度の中期経営計画で打ち出した「10%以上のROE(自己資本利益率)」「5000億円以上の営業利益」の達成は確実だ。PART1で見た通り、業績面ではソニーは間違いなく復活した。

 赤字事業の止血とともに、製品の高付加価値化へのシフトなど、次の成長の柱も育てながらの立て直し。「平井改革」の底流にあったのは、創業者の井深大氏が同社の設立趣意書で示した理想を追うことだったように見える。

次ページ カリスマである必要はない