難題が山積する日本の大学。教育と学問のトップに立つ総長・学長の担う役割はかつてなく大きくなっている。インタビューに応じて、大学の存在意義や将来目指す姿について語る。

高校と大学でビジョン共有を

山極 壽一氏<br /> <span>京都大学総長</span>
山極 壽一氏
京都大学総長
1952年東京都生まれ。京都大学理学部卒。理学博士。京大教授などを経て現職。日本の霊長類研究の第一人者。(写真=宮田 昌彦)

 総合大学であり研究型大学である本学では、研究と教育が一体であることが前提です。今は文明が大きな岐路に差し掛かっています。文明は神話によって作られてきましたが、現在のそれは科学技術です。「ソサイエティ5.0」、超スマート社会に向かう中、科学技術がどんな社会をもたらすのかを総合的な学術の視点で考えねばなりません。

 これは緊急課題です。10年、20年後に専門知識を持ちつつ広い視野から発言し、社会を支える人材を我々は育てなければならないのです。

 課題解決能力が優れているとの評価もあり、昔から「困ったときの京大生頼み」という言葉があります。今はさらに、課題そのものを発見する能力が極めて重要となっています。

 国立大学は5教科7科目をセンター試験で課すなど、広い教養を持つ人材を受け入れています。さらに、京大では少人数ゼミを活用しながら、入学後も広い視野と創造力の涵養(かんよう)に力を入れています。

 教育は大学だけでなく高校も含めて考える必要があります。京大は高大接続改革を重視する観点から複数のプログラムを立ち上げ、教員や大学院生が高校生を講義や実習などで指導しています。高大接続改革では、私立大学の協力がカギとなります。少数科目受験が多く残るのでは、高校の授業も変わりません。

 国立大学は、法人化したのに規制に縛られて自由に動けない面があります。自律的資金の確保や海外への教育輸出などができるよう環境整備をお願いしたいですね。

教育は最重要の投資、国公私立の学費免除を

村田 治氏<br /> <span>関西学院大学学長</span>
村田 治氏
関西学院大学学長
1955年東京都生まれ。関西学院大学経済学部卒。経済学博士。関西学院大学教授などを経て2014年から現職。(写真=菅野 勝男)

 日本の大学教育を考えるときに、忘れてはならないのが公的支出の重要性です。経済協力開発機構(OECD)加盟国の中でも、高等教育に対する投資が少なく、特に基礎研究が弱い。さらに授業料を払えず、進学できない人がいる一方、東京大学など一流大学には高所得の家庭の子供ばかりが進学する状況で、格差拡大は深刻です。

 そうした状況を考えたとき、国の補助金は国公私立関係なく学費免除を中心とした個人補助にすべきだというのが私の考えです。欧州などで実現している国はあるのですから。

 教育投資に対するリターンを、賃金として考えると、大学教育に対して個人が得られる収益率は日本では6~8%程度です。これは欧米に比べても見劣りしません。現在の金利が1%ないことを考えると、非常に高いリターンです。教育投資として大学を捉え直し、学費の格差を取り払って大学間で自由な競争をすべきだと考えています。

 当然、財源はどうするという話になりますが、例えば「教育国債」という考え方があります。インフラなどを整備するための建設国債は、将来にわたって残る物的資本であり、認められているわけです。教育はそれと同じように、国や社会に資する重要な投資なのです。とすれば、大学教育のための国債を発行することも、財政の問題はありますが一つの手段となるはずです。英国ではブレア政権が教育重視の政策にかじを切り、その後、経済の再生につながったという実績があります。