国の施策も大学の改革案も残念ながら「掛け声倒れ」の連続だった。足りなかったのは、理想の実現に向けた覚悟と具体的な実行力だ。「やればできる」という希望が、各地で芽吹き始めている。

立命館アジア太平洋大学は、海外からの学生が全体の半数を占める(大分県別府市)

 大分県の別府温泉にほど近い広大なキャンパスに、144もの国から学生を受け入れてきた大学がある。学生が「グローバル感覚を身につけるにはピッタリ」と胸を張る、立命館アジア太平洋大学(APU)だ。

 冬季試験中の2月上旬。キャンパスでは中国などアジア系に加え、ケニアなどアフリカからの学生らが笑顔で会話を交わしていた。2016年11月時点の学部生5553人のうち、海外からの学生は2697人。数の多さが、2000年設立の同大学がグローバル教育にかける本気度を端的に表している。

 彼らのような外国からの学生は「国際学生」と呼ばれる。通常の大学では、交換留学生や大学院生らが目立つが、APUの場合は日本人同様に4年間通う「フルタイム」の学生がほとんどだ。APUの横山研治副学長は、「あなたの隣に座っている人は別の国の人、そのまた隣はさらに別の国の人という環境になっている」と説明する。

 現役の国際学生の出身国数は90カ国でバランスも取れている。多い国でも全体の10%を超えることはない。

意図的に学生を混ぜる

 2014年に文部科学省がスーパーグローバル大学創成支援事業を設けたこともあり、日本の大学は留学生の積極的な受け入れや英語による授業など、国際化を競う。だが認定された都内の有力私立大学であっても「部活動を見学に来る留学生が入部しないように追い出そうとする人も多い」との声が日本人の学生から漏れるなど、意外に排他的だ。補助金欲しさが先行しているためか「仏作って魂入れず」の大学の方が多い。だからこそAPUのように名実ともにグローバル化を遂げた実績は貴重であり、その鍵は学生を意図的に「混ぜる」ことにある。

 1年生時から象徴的な仕組みが用意されている。代表的なのが「FIRST」と呼ぶ集中異文化プログラムだ。異なる国籍で構成された6人でチームを組み、韓国へ行く。現地で指示書が与えられ、行き先や行動内容が指定される。

 宿泊や食事を自分たちで手配し、現地の人に聞きながら目的地に向かうほか、現地に住む300人にアンケート調査も実施する。宿ではチームに何が大切なのか、言語にはどんな役割があるのかを徹底して議論。異文化間でチームワークやリーダーシップを学ぶ。

 APUアジア太平洋学部の近藤祐一教授は、「こうした苦労は学生が卒業してグローバル環境で働くことになったら日常のこと。早めに経験しておくべきだ」と狙いを語る。

 授業の内容も「座学よりも考えてチームで議論し、プレゼン資料を作成して英語と日本語で発表するものが多い」(APU4年生)という。混ぜる環境は授業以外にも徹底。1年生は全員、キャンパス直結の学生寮「APハウス」への入寮が義務付けられる。ベトナム出身の学生は「異なる国籍で生活する2人部屋が人気ですぐに埋まる」と話す。

 このように国内・国際学生を混ぜる環境は一朝一夕で実現できたのではない。海外の高校生に進学先としてAPUを選んでもらうために教職員が手分けして毎年海外の高校を直接訪問。日本から海外への出張回数は年50回以上、接触する高校生は1万1000人に及ぶ。どれも現地の有名大学に進学するトップ校に絞り込んでいる。「米国の大学といっても、米国人が多い。多くの国の出身者がいてグローバル感覚を身につけられ、治安も安定した日本というのが評価され始めている」(近藤教授)。

 今後の課題は大学院の強化。横山副学長は「ライバルはシンガポールなどの海外大学。大学院ではビジネススクールの世界認証であるAACSBも取得した」と話す。