エリート層だけではなくなりつつある、学生の「ジャパンパッシング」。これまで歯牙にもかけなかったアジアの大学がライバルとして急浮上している。すれ違いが続く大学、産業界、政府。ビジョンを共有して協力しなければ生き残れない。

 「このままではやばい」

 国内屈指の進学校、開成高校に通っていた中田智文氏の転機は、高校2年生の11月のこと。友達に誘われ、しぶしぶ国連を模して議論をする「模擬国連」というイベントに参加したのだ。

 先輩や友達と同じように東京大学に行けば人生なんとかなると、漫然と思っていた。ところが、そこに集まった学生らは、まったく違った。自分の目標を持ちそのためのステップとして大学を見極め選択しようとしていたのだ。

 自分は何をしたいのか。そう問いかけ世界で勝負をしたいと答えが出た時に、中田氏の志望から日本の大学は消え、米国の大学が定まった。米国の入学試験では学業以外の活動も問われる。そこで建築設計事務所にインターンシップで働かせてもらえるように頼みにいった。「高校生は受け入れない」と何度も断られたが、あまりのしつこさに事務所側が根負けしたという。

 中田氏は現在、米ハーバード大学の2年生。専攻は「映像制作(フィルムプロダクション)」で、副専攻は統計学をとった。専攻を1つしか認めない大学が多い日本では考えられない組み合わせだ。「将来はハリウッドで映画プロデューサーとして活躍したい」と、聞けば得心がゆくだろう。

 「授業についていくため、午前3~4時までは勉強している」。想像以上にハードな毎日を送っているが、世界中の学生が集まる中で過ごす毎日は刺激に満ち、充実しているという。