河合塾やベネッセなどの受験産業の企業に、大学が業務を委託する例が増えている。大学の根幹にかかわる業務に及ぶケースもあり、大学の「空洞化」を懸念する声が漏れる。そこには資金と人材不足に苦しむ大学と、利権を手放さない文部行政など、根深い闇がある。

1月19日、都内で開催された河合塾が主催する大学入試センター試験分析報告会(左)。参加するために多くの高校教師が集まった(写真=左2点:陶山 勉)

 「大学から要望があれば、裏メニューとして、入試問題の作成も請け負っている」──。

 やはり本当なのだ。大学による業務の外部委託について取材を進めていた記者は、受験産業のある有力企業の幹部から返ってきた言葉に確証を得た。入試の公平性や機密性を揺るがしかねない取引が、実際に行われている。

 企業と同様に、大学も経営効率化を迫られており、入試の監督業務や、ネット出願システムの提供といった間接業務のアウトソーシングは一般的になっている。だが大学の「本業」であるはずの教育までも委託する例が、広がっているのだ。大学1年生の基礎学力を高めるために、受験産業が大学に講師を派遣して、補習的な授業を提供する。外国語教育の委託事例も多い。例えばベネッセコーポレーションは、近畿大学が2016年に新設した国際学部について「プログラム内容や留学先の選定などを一緒に考えて立ち上げた」と話す。ベネッセは傘下に、有力な英会話スクール「ベルリッツ」を展開しており、多くの大学から業務委託を受けている。

「あくまで大学が判断」

 外部委託する「教育」の対象は、学生向けだけではない。河合塾グループのKEIアドバンスの担当者は「教職員向けのメニューも豊富にある」と話す。アクティブ・ラーニングなど新しい教授法を教員に教えたり、学生に日本語の力をつけさせるには、どんな講座をつくればいいかを指導する例もある。

 関係者によると、大学の業務委託は、規制緩和の流れの中で、1990年代以降増えた。ただ10年ほど前にも、過剰なアウトソーシングが問題視されることがあった。このため、文部科学省は2007年に大学設置基準を改正。「大学が授業科目を自ら開設する」などと明確にして、いわゆる「丸投げ」を禁じた。

 最近の多様な業務の受託について、ベネッセの担当者に聞くと「あくまで大学が判断し、その指示のもとに提供しているもの。大学による丸投げではない」と反論する。

 とはいえ、入試や学部の新設は大学がどんな人材を取り、どう育てたいかを性格づける大学のコア業務とも言える内容である。文科省の幹部も、入試問題の作成を外部委託する大学が存在することを認める。大学の空洞化が進んでいる象徴と受け止められても仕方がない。

 大学による業務のアウトソーシングが、大きなビジネスチャンスになるのは確かであり、様々な業界の企業や団体が受託に乗り出している。ただ受験産業が手掛ける場合、事はそう単純ではない。そうした企業は、受験生や高校に対して、模擬試験などを通じて大きな影響力があり、その力をバックにして、大学に対しても強い発言力をもっているからだ。