独自の視点で新規事業を生み出し続ける増殖力が成長を支える。「見抜いて磨く」「拾う」「捨てない」。3つのこだわりが新たな商機を生む。

「家事の負担から人々を解放したい」
セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ
阪根信一社長
開発を進めている洗濯物折り畳みロボットは今年3月から予約を開始。2019年には洗濯機、乾燥機を一体化する(写真=的野 弘路)

 大和ハウス工業東京本社は、東京都千代田区飯田橋にある。その正面玄関すぐ横。訪れる人が必ず目にする場所は、さながら異空間だ。

 まず目に入るのは、アザラシのような形状をしたロボット「PARO(パロ)」。声を出しながら、首や手が動くさまは、どこか人の気持ちをなごませる。その横に並ぶのは、人の歩行を助けるロボットスーツ「HAL(ハル)」。まるで宇宙歩行用のような近未来感すらある。

 さらに住宅の床下に入ってシロアリの生息状況などを調べる小型移動ロボット「moogle(モーグル)」もあれば、高齢者や障害者などが失禁をした際の後始末をする排泄処理ロボットもある。要するにロボットコーナーなのである。

 住宅や施設建設などを主力とする会社にある「らしくない」スペース。しかし、「らしくない」のはこれに限らない。

 大和ハウスはここ数年で、全国4カ所に大型太陽光発電施設を開設。住宅の屋根に太陽光発電パネルを置いて、作り出した電力をためる蓄電池システムや、レストランや農業ビジネスを考える企業向けに6畳大の野菜栽培ユニット「アグリキューブ」も売り出した。

 「ランドロイド」はベンチャー企業のセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズが開発した洗濯物を自動で畳む家事ロボット。その販売にも一役買い、自社住宅に導入する構想もぶち上げた。

新事業で既存事業作り直し

 介護や福祉、家事の手助けをするロボット、農業施設、太陽光発電施設…。はたから見れば、住宅や施設建設といった本業とは関係の薄い「飛び地」の事業をなぜ手掛けるのか。「人々の生活に役立つものを事業にするという創業者の教えがあるからだ」と樋口武男会長は言うが、「教え」を字句通りに受け止めれば、何にでも手を出すことにもなりかねない。

 だが、樋口会長はそんな見方を打ち消す。「今、うちが手掛ける分野は決まっている。『アスフカケツノ』だ」。事業領域の最初の1文字をつなげたそのキーワードは、漢字にすれば「明日不可欠の」。そんな大和ハウスの事業領域とは何か──。

 「ア」=安心・安全

 「ス」=スピード・ストック

 「フ」=福祉

 「カ」=環境

 「ケ」=健康

 「ツ」=通信

 「ノ」=農業

 例えば住宅用蓄電池は「カ」に該当する。国は、2015年度から住まいの電力消費量と発電量が釣り合ったゼロエネルギー住宅(ZEH=ゼッチ)を普及させる構想を掲げている。住宅用蓄電池はこれに合わせて商品化したもので、既存の住宅事業に付加価値をもたらす可能性がある。

 本社のロボット部屋に鎮座する「PARO」や「HAL」などは「フ」のビジネスだ。今は介護施設向けに販売しているが、ロボット事業を担当する田中一正ヒューマン・ケア事業推進部長は「高齢化社会に備えた、よりよい住環境を生み出す」と語り、個人向けへの販路拡大も視野に入れる。

 「フ」のビジネスは、遠い将来も見据える。「例えばロボットに人が触れた時、その人の体調に関わるデータを収集できるようになれば、治療に役立てられるかもしれない。それが新しい事業につながる可能性もある」(田中部長)。

 人口減少で日本の住宅着工戸数は減少が確実視されている。その中で祖業である住宅事業にとどまれば、成長はほとんど見込めない。

 しかし、「アスフカケツノ」をキーワードとした新たなビジネスを創造し続ければ、厳しい環境の中でも成長を遂げられる。

新しい事業を次々と生み出し、既存事業を作り替えている
●大和ハウス工業の新事業コンセプトと事業構造