グローバル企業として、日本勢ではいち早くESG(環境・社会・ガバナンス)を重視し始めたコマツ。鉱山会社トップとの対話で、世界の潮流に気付いた。

(聞き手は 島津 翔、大西 孝弘)

(写真=竹井 俊晴)
PROFILE
大橋徹二(おおはし・てつじ)氏
1954年生まれ。62歳。77年東京大学工学部卒業後、コマツ入社。生産本部真岡工場長、コマツアメリカ社長COO(最高執行責任者)、常務執行役員生産本部長、取締役(兼)専務執行役員(事業戦略、生産・販生、情報戦略、産機事業管掌)などを経て、2013年4月に社長兼CEO(最高経営責任者)就任。2016年4月から始まった中期経営計画で、ESG(環境・社会・ガバナンス)を位置付けることを自ら提案した。

 問 トランプ米大統領の誕生で、通商政策が大きく変わる可能性があります。どのように対応しますか。

 答 しっかりした会社にはしっかりした信念があります。政策変更なんて当たり前の話で、それにいちいち左右されて信念を変えていたら、すぐ死んでしまいますよ。

 我々はこれまで、もっと大きな波を乗り越えてきました。鉱山機械の世界需要は過去7年で5分の1になってしまった。そういう大きな波が、この数十年続いてきたんです。そういう業界にいる人間からしたら、「何が心配なんですか」というくらいにしか思っていません。

 問 2016年4月に始まった中期経営計画ではコマツとして初めて、「ESG(環境・社会・ガバナンス)」を経営の軸に位置づけました。年金基金などの長期投資家が、事業環境の変動リスクに耐性のある企業を選別するための基準として、ESGを重視しています。コマツもCO2の削減目標を数値として盛り込むなど、一歩踏み込みました。ESGには長期的な視点が必要ですが、一方でトランプ政権の誕生など短期的な政策変更もあり得ます。短期的な変化と長期的な潮流に対し、経営上、どのようにバランスをとるのでしょうか。

 答 短期的に変えなければならない項目はあまりないと思っています。もちろん、排ガス規制の強化などが政策として出てきたらもちろん対応します。それから、新技術の実用化でより早く目標が達成できる目処が立てば前倒しします。それは当たり前の話です。それ以外の項目は粛々とやっていきますよ。

 コマツの経営の基本は、「品質と信頼性」を追求し企業価値を最大化すること。企業価値とは、社会と全てのステークホルダーからの信頼の総和なんですね。従業員も投資家も顧客もサプライヤーも全部です。だから、誰かにだけ良いことをやるというのはこの経営の基本からすると「おかしいこと」なんです。バランス良くやっていきます。