長期と短期、経営の「二枚舌」は許されない

 問 多様なステークホルダーを満足させるには、長期的な視野が欠かせませんね。

 答 難しいのは、一方で長期ビジョンに基づく経営をしながら、他方で短期的に危機感を持って行動し、イノベーションを起こしていかなければならないことです。長期的な視点だけに基づいて経営をしていたら、経営戦略は鋭さを失い、優位性を打ち出せなくなる可能性がある。しかし、短期的な視野だけに基づいて経営をしていたら、政府との関係構築や気候変動など、他の要素を見失いかねません。

 成功している企業というのは、この両方の視点を上手くバランスを取っています。

 問 それをやるのは容易なことではありませんね。

 答 まさに、非常に難しい。短期的に非常に高いレベルで経営戦略を実行しつつ、長期的な視点で経営モデルを変革していかなければなりませんから。しかも今、企業は徹底した透明性を要求されており、すべてのステークホルダーに対して完全にオープンである必要があります。もはやステークホルダーごとに異なる説明をするような二枚舌は許されません。短期、長期を一貫した戦略で同時に実行していく必要があるのです。

 経営トップの最も重要な責任は、短期と長期の橋渡しをすることです。短期的な競争に勝つために、組織に競争心や危機意識を醸成すると同時に、幹部だけではなくすべての従業員のモチベーションを高めなければなりません。他方、企業の存在意義を常に見つめ直し、長期的に社会に価値を提供するための目的に向かって、行動し続ける必要もあります。それを成し遂げることが、これからの経営に求められるリーダーシップでしょう。

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