世界最大級の飲料メーカーにして、米国の象徴でもあるコカ・コーラ。全てのステークホルダーに配慮する “全員参加型の資本主義”にかじを切る。ローカル化の徹底とブランド強化で、“トランプの時代”にも揺るがない。
(聞き手は 本誌編集長 飯田 展久)

経済成長に取り残された人々が失望している。
企業、政府、市民社会が協力して社会課題の解決を。
問 まず、トランプ氏の米大統領就任を、どのように受け止めていますか。
答 当然ながら、これは民主主義の結果です。国民が決断したことですので、私たちは彼の成功を望んでいます。米国のみならず世界中の人々にとって、トランプ氏が大統領として成功することが最も重要なことだからです」
とはいえ、本当に驚きました。非常に多くの世論調査の結果が間違っていたのですから。落胆したということはなく、とにかく驚いたというのが率直な気持ちです。
問 そもそもなぜ、米国民はトランプ氏を大統領に選んだのでしょうか。
答 トランプ氏を大統領に選んだ動きと同じ現象が今、世界中で起きています。過去10~15年ほどの間、大国でも小国でも、ごく限られた人たちだけが富の大部分を独占してきました。その結果、経済成長の恩恵を得られなかった人々の間に、現状に対する失望が広がっているのです。
英国の欧州連合(EU)離脱なども、こうした不満が背景にあるのでしょう。今年はフランスで大統領選、ドイツで総選挙があります。これからの1年、また何かが起こるかもしれません。
世界は振り子のように、常に揺れ動いています。今向かっている方向が最終的に全ての人々にとっていい結果をもたらすのかどうかは分かりません。それは歴史が答えを出すことです。しかし、私たち企業は今、そのサイクルの真っただ中にいて、何とかしてこの状況を乗り切らなければなりません。
問 トランプ大統領の時代を乗り切るために、企業は何をすべきでしょうか。
答 誰もが経済成長に置いてきぼりにならないよう、全員参加型の資本主義に移行しなければなりません。政府や教育機関、民間企業が協力して、資本主義が社会課題の解決のために機能するような“コネクテッド・キャピタリズム”を作り出す責任があるでしょう。
例えば、これから技術革新が急速に進めば、多くの職が奪われてしまうかもしれません。資本主義の公式を変えない限り、悲惨な結果を招いてしまう。企業、政府、教育機関、そして市民社会が力を合わせて、この状況に立ち向かわなければならないのです。
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