不確実性の高い時代に、「持続可能性」と訳される「サステナビリティー」をどうやって実現するか。利益や配当という財務面だけではなく、環境や社会という非財務面の目標を同時に追求する。もちろんそれは重要だが、日本企業にはその目的=ビジョンを語る力も足りない。
2016年12月期で、27期連続の増配を見込む花王。日本企業として最長記録を自ら更新し続ける同社にとって、「持続的な成長」は株主に対する最大のコミットメントだ。ただし、澤田道隆社長にとって、「持続可能性=サステナビリティー」は、株主価値の向上よりも重要な意味を持つ。グローバル企業のトップ集団を目指す上で、環境や社会にとっても「サステナブル」であることが、極めて重要な要素だからだ。


澤田道隆 氏

「2030年に世界3位を目指したい」
2016年12月、澤田社長は中期経営計画のアナリスト向け説明会で、こう宣言した。地道に利益を積み上げていくことが得意な花王にとって、10年以上先の「あるべき姿」から逆算して長期計画を作ることは異例だ。澤田社長はこの宣言に、売上高やROE(自己資本利益率)などの財務指標だけではなく、米P&G、英蘭ユニリーバに次ぐ「社会的な存在感」を世界で発揮する会社になるという決意を込めた。
最近、その思いを改めて強くした出来事があった。2016年第3四半期の決算発表の翌日、株価が前日終値比で約6%下落。紙おむつなどのヒューマンヘルスケア事業の営業利益が、マーケティング費用がかさむなどして前年割れしたことを嫌気された。だが、澤田社長にとってはそれは将来への投資であり、計画に沿ったものだった。
「日本の枠組みでは四半期決算はやめられない。それでも世界の競合が長期視点で経営している以上、同じ土俵に立ちたい」。澤田社長が意識するのが、例えば世界2位のユニリーバだ。
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