1kg輸送コスト1億~2億円

 ハクトが軽量化を追求するのは、宇宙という特殊な空間では軽量化がコスト競争力を決定づけるからだ。何らかの物体を重力に抗って宇宙へ打ち上げて月まで運ぶには、1kg当たり1億~2億円もの輸送コストがかかるとされる。

 地球でも燃費などの面で小型軽量化は重要になるが、宇宙ではそれが極端な形で表れる。ロケットでも衛星でもローバーでも、「軽薄短小」こそが最大の武器になり得るのだ。

 アクセルスペース(東京都千代田区)が狙うのも、低コストで打ち上げられる超小型衛星。2022年までに50基を打ち上げ、経済活動がある大半の陸地を観測できる体制を目指す。中村友哉社長は「衛星から見える画像と実際の地上の状況やデータを突き合わせることで、農業やインフラ管理の効率化など具体的で多様な活用法が見えてくる」と説明する。

 2017年末にまず新型衛星「グルース」3基を打ち上げ、2018年から一部地域でサービスを開始する予定。順次衛星を増やし、50基達成後はフルサービスに移行する。現在は東京都心にある本社の一角に設けたクリーンルームで衛星を製造しているが、量産は外部のメーカーに委ねる。

 グルースは各辺が60cm・60cm・80cmで重量は約100kg。解像度はクルマが判別できる程度の1ピクセル2.5m、撮影できる幅は57km以上だ。

 米国などには1m以下の高精細を競う企業も少なくない。それでもアクセルスペースの中村社長は「広い地域の撮影など、観測衛星だからこそできることを追求する」と言う。高精細を追求すれば、それだけ望遠鏡の増強などが必要となり衛星の大型化につながり得る。撮影エリアが狭くなりドローンとの競合も想定される。多くの衛星を使った定点観測で有意な変化を十分読み取れるとし、高精細競争とは一線を画して独自の道を切り開く。

 コストと性能のバランスを重視した小型衛星の使い勝手のよさに企業も飛びついている。既に三井物産やウェザーニューズが出資したほか、三井不動産や電通など幅広い業種との提携が相次いでいる。

 三井物産と検討しているのが、パイプラインや森林などの管理への活用。「取引先への提案も含めて事業の付加価値向上につながりそうだ」(三井物産新社会システム事業部の下薗和幸氏)。三井不動産はリゾート施設などの巡回や維持管理に関わるコスト削減につながるとみている。

 衛星で得たビッグデータを使ったサービスでも、身近な分野や国内企業での活用イメージがつかめれば、一挙に当たり前のビジネスとなって収益化が近づく。

(写真=陶山 勉)
(写真=陶山 勉)
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