官民挙げて海外に売り込み

官民挙げて日本の宇宙関連技術をアピールしたUAEでの展示会

 海外市場を開拓しようとマーケティングも活発化している。2016年11月初旬、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで開かれた石油関連技術の展示会。日本ブースには人気漫画『宇宙兄弟』の作者、小山宙哉氏が描いた全長15mの巨大パネルがあった。筑波大学の自動水中ロボットやコマツの自動運転建機に三菱重工のH2A、ベンチャー企業が開発する小型ロケットや小型衛星が描かれていた。

 「今回はどれが新しいんだい?」

 立ち寄ったのはUAEのマズルーイ・エネルギー相だ。UAEの最大の懸念は石油の枯渇。「国家を維持する次の産業」として火星での資源開発に注目し、2020年に火星探査機を打ち上げるプロジェクトを進めている。2016年3月、この案件獲得に成功したのが三菱重工。H2Aの打ち上げ成功率が約97%と国際的な信頼感の目安になる95%を上回ることをアピールし、当局の心を射止めた。日本の関連企業はUAEでの実績をテコに海外展開の足掛かりとする考えだ。

 経済産業省の依頼で日本ブースの監修を務めた投資家、グローバル・ブレイン(東京都渋谷区)の青木英剛氏は「日本は自動車やエレクトロニクス分野で育てた小型化の技術に強く、世界に十分に売り込める競争力がある」と言う。青木氏は三菱電機の元技術者で、世界に先駆けて開発した無人物資補給機「こうのとり」のエンジニアを務めた経歴を持つ。

 これまで日本の宇宙関連産業は内閣府や経産省などが所管する宇宙航空研究開発機構(JAXA)の資金に依存してきた。だが宇宙関連予算は3000億円前後で頭打ちになっており、今後も大きく伸びる見通しはない。「JAXA依存ではジリ貧になる」(大手衛星メーカー幹部)という危機感を多くの関係者が共有している。

9割以上を官需が占める
●日本の宇宙関連事業の売上比率
出所:日本航空宇宙工業会

 国の資金の先細りを乗り越え、世界的な宇宙需要を取りに行くためには、三菱重工やIHIのようにコスト構造の転換を図るか、「宇宙をもうかる産業にして、異業種からの参入を促していく必要がある」(経産省製造産業局の靏田将範・宇宙産業室長)。

 国の予算の頭打ち、米国での宇宙ベンチャーの勃興、そして各国で衛星の打ち上げ計画が相次ぐようになったことで、日本でもロケット開発に資金を投じようとする民間企業が現れ始めた。

 2016年12月、エイチ・アイ・エス(HIS)とANAホールディングス(HD)は名古屋市のロケットベンチャー、PDエアロスペースとの資本提携を発表した。「米国では有力ベンチャーが台頭している。日本でも新しい技術を宇宙に活用できる土壌を作りたい」とHISの澤田秀雄社長は力を込める。

エイチ・アイ・エスとANAホールディングスは宇宙旅行の事業化を目指すベンチャーに出資を決めた(イラスト:PD Aerospace, LTD. / KOIKE TERUMASA DESIGN AND AEROSPACE)

 PDエアロスペースの緒川修治社長は、民間企業や大学で航空機設計やジェットエンジンの研究に携わってきた。ロケットとジェットエンジンを簡素な仕組みで一体化する「パルスデトネーションエンジン」を思いつき、2000年代からその開発に没頭してきた。

 ただ、宇宙分野で国に頼らず成長するのは容易ではない。「夢に共感してくれても、投資に踏み切る企業は現れなかった」(緒川社長)。地元愛知県には高い技術力の自動車部品メーカーが数多くあるが、中長期的な投資が必要な宇宙事業への関心は薄かった。

 緒川社長は自宅裏にある作業場で自己資金を切り崩しながら開発を進めた。コストを抑えるため必要なものはできるだけ自作した。今も100円均一の雑貨店で購入した部品を組み込んだ試験機器が現役で活躍している。