日本の宇宙関連ビジネスは国家予算に依存し、プレーヤーも限られてきた。しかしここにきて、海外市場開拓や異業種からの参入など、変化の兆しが見えてきた。
ヒト・モノ・カネを集め、イノベーションに突き進む米国の宇宙関連企業。共通するのは、開発者視点ではなく、宇宙を利用する顧客を強く意識したモノ作りやサービスを志向していることだ。それが「官から民」への構造変化を加速させ、新市場の拡大を促している。
では日本勢はどうか。2016年は従来とは違う企業の動きが目立った。「科学プロジェクトという位置づけから、その利用を見据えたフェーズに移っている」(内閣府宇宙開発戦略推進事務局の畑田康二郎・参事官補佐)のだ。

2016年12月20日夜、鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から飛び立った「イプシロン」2号機は、発射から13分後に探査衛星の切り離しに成功した。
手掛けたのはIHI子会社のIHIエアロスペース。エンジンの増強や搭載スペースの拡大で打ち上げ可能重量を590kgと1.3倍に増やしつつ、点検作業にAI(人工知能)を導入するなどして工程を効率化した。
結果、打ち上げ費用を約50億円に抑制。仏アリアンスペースのアリアン5(約100億円)やスペースXのファルコン9(約70億円)を大幅に下回るが、今後一段の引き下げをもくろむ。
日本の主力ロケットを手掛けてきた三菱重工業も「H2A」「H2B」の後継機で、2020年度の初号機打ち上げを目指す「H3」ロケットの打ち上げ費用を、従来の約100億円から半減させる計画だ。構造を簡素化したり、汎用部品を積極的に使ったりして達成する。受注から打ち上げまでの期間も約2年から1年に短縮し、顧客が希望する時期になるべく打ち上げられるようにする。
いずれも、世界で激化する「衛星争奪戦」での勝ち残りを狙った動き。米連邦航空局によれば、2017~24年の世界の衛星打ち上げ計画は800基以上。それだけ成長が期待できるロケット需要を海外企業に独占されないためには、長年のビジネスモデルを変えて対応しなければならない。
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