シャープの液晶技術を活用
「2017年はカイメタにとってビッグイヤーになりそうだ」。ネイサン・クンツ社長兼CEO(最高経営責任者)はこう胸を躍らせる。というのも、同社のアンテナはクルマ以外の移動体、例えば船舶や鉄道車両、大型バスなどでも「小型軽量」「大容量データ通信」「通信安定性」という3つの利点を生かせる。大型輸送機への搭載に向く直径70cmのアンテナを2017年上期に発売する予定で、既に量産体制に入っている。
アンテナの主要構成部品であるパネルの構造がテレビの液晶パネルとほぼ同じであるため、カイメタは製造をシャープに委託することにした。これは両社にとってウィンウィン。シャープは、需要が不安定な液晶パネルの代わりにカイメタのアンテナを作ることで生産ラインの稼働率を上げられる。カイメタは、生産ラインの初期投資をしなくて済み、製造コストを下げられる。
トヨタもシャープも、宇宙からは程遠い「地上」のビジネスを展開する企業だ。だが、そんな両社でも宇宙の恩恵は受けられるし、地上のビジネス課題を解決する「秘策」にもできる。2社はここに気付き始めた。
2017年は、こうした新しい宇宙の使い方があらゆる産業で進む「宇宙商売ビッグバン」が起こることが確実だ。世界の動向を見れば、その兆候は既に表れている。
一つはカネの動きだ。世界の宇宙関連ベンチャーへの投資は2015年、前年の約5億ドルから約23億ドルに膨れ上がり、2016年には約27億ドル以上に達した。「今、世界中の有力な投資家が宇宙関連に注目している。宇宙はIoT(モノのインターネット)に続く優良出資先だ」。宇宙に特化した投資家グループ、スペース・エンジェルス・ネットワークのジョー・ランドン氏はこう説明する。
背景には宇宙産業の構造変化がある。米国政府は2006年から、ロケットによる国際宇宙ステーションへの物資輸送を広く民間に開放した。日本でも安倍晋三首相が2015年12月、GDP(国内総生産)600兆円に向けて宇宙分野を柱の一つとすると明言。これを受け経団連は2016年11月、「2030年度までに日本の宇宙産業を(2014年度8兆2000億円から)20兆円に育てるべきだ」との提言を表明した。
こうした動きと並行して、スマートフォンやタブレットが広く世界に普及したことから、センサーやCPU(中央演算処理装置)といった部品の価格が下落。これらを活用することで、ロケットや衛星を以前では考えられない低コストで作れるようになった。
IoTの本格普及も宇宙産業を後押しする。つながるクルマや「インダストリー4.0」などはIoTの代表例だが、これらの市場拡大は、衛星通信など宇宙産業の需要を増やすことにつながる。
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