イノベーションの停滞を嘆く経営者が多い中、ダイソン氏は自ら行動し、その状況を変えようとしている。課題を自ら発見し解決に挑む人材の育成は日本企業にも共通の問題。人ごととせず、正面から取り組む必要がある。

<span class="fontBold">東京大学博士課程の孫さんは義足の不満を解決する製品を開発した</span>(写真=的野 弘路)
東京大学博士課程の孫さんは義足の不満を解決する製品を開発した(写真=的野 弘路)

 2017年9月、異色の大学が開校した。ダイソン工科大学(ダイソン・インスティテュート・オブ・エンジニアリング・アンド・テクノロジー)。企業が創設した英国初の4年制大学だ。ジェームズ・ダイソン氏は大学のために今後5年間で約30億円の私財を投じる。

 機械工学やソフトウエアの基礎科目を学ぶほか、年間47週は同じ敷地内にあるダイソン本社で働きながらエンジニアリングを学ぶ。授業料は全額、ダイソン側が負担するうえに、働いた分の給料も支給される。しかも、卒業後にダイソンに入社する義務はない。初年度は25人の定員に900人以上の応募が殺到。33人が狭き門を通過した。

 将来的には修士、博士課程もある総合大学となる計画で、学生寮なども含む「ダイソンビレッジ」の建設が急ピッチで進む。完成は18年9月だ。

 なぜ、ダイソン氏が大学を設立するのか。背景にあるのは、エンジニアを軽視する風潮への怒りにも似た不満だ。

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