「10年後のグーグル」になるには、誰も手を着けていないフロンティアの発見が欠かせない。まずは「新興国のアマゾンになる」と意気込む日本企業のケースを見てみよう。
手元の温度計は、氷点下20度を示していた。2018年12月中旬、モンゴルの首都ウランバートル近郊の貨物ターミナル。吐いた息がそのまま凍り付きそうな極寒の季節だが、モンゴル人たちは何食わぬ顔で、コンテナの荷降ろし作業を黙々とこなしている。
川崎港から海路で中国・天津へ、そこから鉄道に載せ替えての計20日間。約3500kmの長旅を終えたコンテナから降ろされているのは日本の中古車だ。これだけなら中古車輸入の現場では珍しくない光景だが、このあと作業員たちがトランクを開けると、段ボール箱が姿を現した。印刷されているのは花王の紙おむつ「メリーズ」のロゴ。前のオーナーの忘れ物?いや違う。

海外の消費者向けに中古車販売サイトを運営する、ビィ・フォアード(東京・調布)が積んだ荷物だ。同社は「輸出する車両の空きスペースを有効活用する」という秘策を武器に、越境EC(ネット通販)世界大手への変貌をもくろむ日本企業なのだ。
「新興国のアマゾン・ドット・コムになる」と真顔で話すのは山川博功社長。大言壮語に聞こえるかもしれないが、思い返してほしい。グーグルにアップル、フェイスブック、アマゾン。各社の頭文字から「GAFA」と称される米巨大IT(情報技術)企業の成長を、ほんの十数年前にどれだけの人が予測できていただろうか。
「後発」の新興国で存在感
ビィ・フォアードの強みはアフリカやカリブ諸国といった、新興国のなかでも比較的「後発」とされる国々にある。設立は04年、売上高は18年6月期に570億円。アマゾンより規模は小さいが、これら後発の新興国ではアマゾンを圧倒する物流網を持つ。
そのネットワークはコンテナ船が接岸できる港湾付近に限らない。クリック一つで我が街まで質の高い日本車を届けてくれる。そんなサービスを実現すべく、現地のパートナー企業を開拓。モンゴルのような内陸国なら鉄道に載せ替えて運び、道路事情が悪くキャリアカーを運行できないアフリカなら隊列走行するドライバーを手配する。提携するパートナー企業は世界で45社を数え、販売実績は153カ国に及ぶ。
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