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IoT事業は1兆円規模に

 日立の最大の強みは、巨大なIT(情報技術)部門を抱えていることにある。同社の情報・通信システム部門の社員数は全体の約4分の1に相当する7万人強。この部門が中核となって、あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」事業を展開している。18年度には同事業の売上高が1兆円を超える見通しで、IoTで稼ぐノウハウは磨かれつつある。

 このノウハウをABBの電力システム事業に注ぎ込めば、発電量の変動が大きい再生可能エネルギーを生かした次世代電力網の展開力も向上する。

 もちろん、東芝や三菱重工も電力事業でのIoT活用策を探っている。東芝は11月に発表した中計で、発電所の運営効率化サービスなどを手掛ける考えを示し、三菱重工もデジタル化対応を急ぐ。

 もっとも、東芝は経営危機で開発投資が回らず、「後発の状態にある」(東芝幹部)。三菱重工は三菱グループの三菱電機がIoTサービスを展開しており、「連携は容易ではない」(外資系アナリスト)。そもそも小型ジェット旅客機「MRJ」の開発が大詰めを迎える中で、日立のような巨額買収に踏み切るほどの資金的な余裕もなさそうだ。

 原発輸出の限界が見える中で原発御三家がたどり着いた「分かれ道」。IoTを軸に新たな道を切り開く日立とて巨額買収のリスクはついて回る。今回の買収資金は手元資金と借入金で賄うが、それでも年300億円とする償却費負担は重い。買収事業を早期に収益化できるか。分かれ道の先も決して平たんではない。

(佐伯 真也、長江 優子)

日経ビジネス2018年12月24日・31日号 12ページより目次