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日立製作所、東芝、三菱重工業の「原発御三家」はどうやら分かれ道に来たようだ。成長事業に位置づけた原発輸出が思うように進まない中、次の収益源を探る3社。先手を打ったのはスイス・ABBからの電力システム事業買収を決めた日立だった。

IoTを生かした緻密な制御が求められる(写真はドイツの電力会社)(写真=Sean Gallup/Getty Images)

 「次期中計(中期経営計画)の方向性を示せた」。日立製作所がスイスの重電大手ABBから送配電などの電力システム事業を約7000億円で買収すると発表した12月17日。日立の東原敏昭社長兼CEO(最高経営責任者)は記者会見でこう語った。

 2017年度の売上高が100億ドル(約1兆1000億円)で、欧米や中国など世界200カ所に営業拠点を持つABBの電力システム事業。日立はABBと15年から日本の高圧直流送電分野で合弁事業を手掛けてきたが、ABBの電力システム事業そのものを手中に収めることで、新たな収益の柱を作り出す道筋がついた。

 日立が電力事業で成長路線を敷けた意義は大きい。これまで原発輸出に活路を見いだしてきたが、東日本大震災後の安全対策の徹底でコストが膨張、採算が取りにくくなっているからだ。日立は英国で計画する原発建設計画が難航。早ければ19年1月中に着工の可否を判断する可能性も出てきた。

 今後の焦点は、日立と並び、国内原子力産業をけん引してきた東芝と三菱重工業の成長戦略だ。両社とも日立と同様、原発輸出に力を注いできたが、東芝は米ウエスチングハウス買収があだとなって経営危機に。三菱重工もトルコ原発の建設計画を断念する方向だ。

 日本政府も旗を振った原発輸出計画が暗礁に乗り上げたことで、新たな収益源を探ることが急務だった「原発御三家」。ただ、日立が同社にとって過去最大のM&A(合併・買収)を決断できたのは必然だったのかもしれない。

日経ビジネス2018年12月24日・31日号 12ページより目次