カギを握るのは駐車場シェア

 そこでカギを握るのが駐車場のシェアサービスとの連携だ。カーシェア事業者が自ら駐車場を確保しなくてもよくなるだけでなく、利用者がクルマを借りたり返却したりする場所の選択肢が爆発的に増える。駐車場シェアを手掛けるある企業の幹部が「2014年にトヨタから業務提携を持ちかけられていた」と明かすように、トヨタは以前から駐車場シェアでの展開を狙っていた。

 トヨタが子会社で展開するカーシェアサービス「ラクモ」では短時間の利用が多く、駐車場を15分単位で予約できるアキッパのサービスと相性が良い。クルマを空き駐車場に乗り捨てられるようにすれば、利便性はさらに上がる。

 現時点では、空き駐車場をカーシェアでの乗り捨て場所にすることは難しい。国土交通省が2014年にカーシェアでの乗り捨てを解禁したものの、事業者は「乗り捨て専用スペース」を確保する必要があるためだ。ただドイツのように乗り捨ての完全解禁でカーシェアの利用者数が急伸した例もあり、国内でも規制が緩和される可能性がある。

 シェア経済の権威、ニューヨーク大学経営大学院のアルン・スンドララジャン教授は「最も所有の意味が薄れるモノがクルマ」と指摘する。その潮流をいち早く察したダイムラーや米フォード・モーターはメーカーからモビリティー(移動体)を使ったサービス事業者になる姿勢を鮮明にしている。

 シェア経済の台頭や自動運転などの新技術により、クルマの所有のあり方が変わろうとしている。その中で、トヨタですら多方面に手を打たざるを得ない状況が続く。国内でのモビリティーサービスを巡る覇権争いの結論はやがて出る。

(島津 翔、染原 睦美)

日経ビジネス2016年12月5日号 12~13ページより目次

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