相変わらず人気の毎月分配型

 そもそも松井証券には投信の販売で苦い経験がある。同社は1998年、当時2~3%だった投信の販売時手数料を一律で1%に引き下げようとして運用会社の反発を食らい、商品の供給を止められた。以来、投信は取り扱わずに株式売買中心で営業してきた。

 「これまでも機会は虎視眈々と狙っていた」(和里田聰常務)という松井証券が、再参入を決めた要因は3つある。

 1つ目はロボットアドバイザーの存在だ。個人の属性などに応じたポートフォリオを提案する技術で、金融機関が運用相談などに取り入れている。松井証券は販売再開に当たって、無料のロボアド機能「投信工房」を用意。利用者が8つの質問に答えれば、最適な資産配分から組み入れ投信まで推奨する。

 2つ目は、ノーロード投信や信託報酬を低く抑えた投信が増えてきた点だ。格付投資情報センターによると、インデックス型の平均信託報酬は過去最低水準にある。投信工房でも推奨投信の選択基準の一つは信託報酬の低さだ。

 3つ目の要因は、「業界そのものの大きな変化」(和里田常務)。“肉食派”の松井証券までが低コスト投信を扱い始めた背景には、草食投資を後押しする政府の意向がある。

 将来の年金支給額の低下が避けられない中、政府は国民が老後資金を少しでも確保できるよう、投信や株式投資を通じた個人の資産形成を促してきた。少額投資非課税制度(NISA)や確定拠出年金などの整備が最たる例だ。金融庁は2017年度の税制改正要望で、成人と未成年者向けに続くNISA第3弾として、投信の長期積み立てに特化した制度の創設も求めている。

 政府の取り組みはまだ道半ばにある。日本銀行が公表する資金循環統計によると、今年6月時点で個人が保有する投資信託の残高は87兆円と、金融資産全体の5%にとどまる。この割合は10年前からほぼ変わっていない。日本では投資リスクを嫌う人が多いからだ。

資産額上位は全て「毎月分配型」
●資産額ランキング(11月25日時点、ETF=上場投資信託=除く)

 投信を買う人の中では、短期志向の人が多い。上の表で示した、国内で販売されている資産規模上位10位の投信は、全て毎月分配型と呼ばれる、毎月高い水準の分配金を支払うタイプとなっている。

 資産規模1位の「新光 US-REITオープン」を例に取ると、3000円台半ばの基準価額に対して、毎月75円の分配金が支払われる。1年間で分配金の総額は900円に積み上がる。

 見た目のリターンの高さに、経験の浅い投資家は毎月分配型に飛びつきやすい。だが、高い分配金を生み出すため、一部の運用会社は株式や不動産などに投資して得た運用益だけでなく、投資家から受け取った元本までも切り崩している。元本を崩すと長期的にはパフォーマンスは悪化するため、長期の資産形成には適さない。それでも証券会社は販売時手数料欲しさに、毎月分配型を優先して販売してきた。

 しかし、運用成績という身の丈以上に分配金を払い続けることはできない。11月には資産規模で国内2位の「フィデリティ・USリート」が米不動産市況の減速を受け、分配金を従来の100円から70円に引き下げた。

 運用成績に失望した投資家は、別の短期志向の投信へ移る。金融機関も長期投資に向く低コスト投信を勧めるよりも、販売時手数料が受け取れ、信託報酬も高い投信へ誘導した方がもうけが出やすい。こうした「回転売買」が利益の源泉だった。