役員報酬開示のあり方

 透明性の高い役員報酬開示の体制をどう作るか。

経営トップの暴走は今に始まったことではない
●経営トップが絡んだ主な企業不祥事
不祥事が
発覚した時期
企業名 経営トップ 内容
1982年 三越 岡田茂 愛人への不当な利益供与
1991年 イトマン 河村良彦 3000億円にのぼる資金を不正引き出し
2004年 西武鉄道 堤義明 大株主(コクド)の持ち株比率を過少記載。インサイダー取引も
2004年 カネボウ 帆足隆 債務超過・赤字なのに「資産超過・黒字」と偽った有価証券報告書を提出
2006年 ライブドア 堀江貴文 売上高に約53億円の不正計上
2011年 大王製紙 井川意高 カジノ資金55億円をグループ会社から 不正借り入れ
2012年 オリンパス 菊川剛 財テク失敗で抱えた約1000億円の 損失を不正処理で隠蔽
2015年 東芝 西田厚聰、
佐々木則夫、
田中久雄
工事損失引当金の過少計上や 利益水増し

 まずは企業自身がガバナンスを徹底することが先決だ。例えば資生堂は社長と役員の選任や報酬について取締役会の諮問に答える報酬諮問委員会と指名諮問委員会を、それぞれ01年と06年に設けている。メンバーは当初から社外取締役と社内は社長だけ。15年春からは両委員会の下に評価部会を置いて社長の定性評価を受け持つようにした。16年3月からは取締役のうち半数以上を外部とし、経営者からの独立性を一段と明確にした。一連の改革で経営者の暴走を防ぐ仕組みを作る狙いだ。

(写真=5点:共同通信)
(写真=5点:共同通信)
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 監査機能の強化も必要になる。EU(欧州連合)では03年末にイタリアの大手食品メーカー、パルマラットが創業者主導による巨額粉飾決算で破綻したのを機に監査法人による企業の監査を一定の期間で別の監査法人に交代するローテーション制の導入議論が本格化、16年6月に最長10年での交代が義務化された。

 もともと監査法人は監査報酬を支払う企業に対して受注側という点で立場が弱くなりがち。ある監査法人が同一企業を長期間担当するとなれ合いに陥りやすい。それを防ぎ、新たな監査法人の目で厳しい監査をするのを狙った。

 日本では03年に一定規模の上場企業を同一の会計士が監査できる期間を最長7年までとして交代する会計士のローテーション制が導入されたが、監査法人自体のローテーション制は企業と監査法人双方が「交代で次の監査法人に一から企業の業務・会計概要を説明する必要がある」「大手監査法人に契約が集中しかねない」などとして反対してきた。会計不祥事が続く中、改めて検討する価値はあるだろう。

 もっとも、いくら体制を整えても最後は経営者次第という面は否めない。

 米国では01年末の総合エネルギー会社、エンロンと02年6月の通信会社、ワールド・コムの巨額粉飾事件を機に罰則の禁錮刑の刑期をそれまでの5年から一気に最長20年に延ばした。故意に不適切な開示をした経営者には100万ドル(約1億円)以下の罰金が科される。一方の日本は有価証券報告書に虚偽記載しても、10年以下の懲役刑や1000万円以下の罰金。米国と比べると、罰則は甘い。トップの暴走を防ぐためにも一段の罰則強化を検討する時期に来ているかもしれない。

(日産虚偽記載問題取材班)

日産はルノーと対等な立場に持ち込めるか

 「ルノーとの不平等条約」。日産自動車関係者がかねてこう指摘していたのが、仏ルノーが43.4%の議決権付きの日産株を保有するのに対して、日産は議決権なしのルノー株を15%持っているという関係だ。微妙なバランスの上で成り立っていた両社を率いてきたカルロス・ゴーン氏の“失脚”。「関係を見直す好機」(日産幹部)とするなかで、日産はどんな手を打てるのか。

 まず、焦点になるのが、逮捕されたゴーン氏とグレッグ・ケリー氏の取締役を解任するタイミングだ。代表権を持つ西川広人社長兼CEO(最高経営責任者)が臨時株主総会を招集する必要があるが、「招集してから最短2週間で開催できる」と企業法務に詳しい牛島信弁護士は言う。

日産が持つルノー株は議決権がない
●3社連合の出資関係
日産が持つルノー株は議決権がない<br /><span>●3社連合の出資関係</span>
注:カッコ内は2017年の世界販売台数
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 43.4%の日産株を保有するルノーが反対する可能性もあるが、日産にはこれを阻止するカードがある。日産がルノーの株を買い増すことだ。日本の会社法では25%を出資すれば、ルノーが持つ議決権はなくなる。ゴーン氏の逮捕でルノーの株価は下落しており、10%分を買い増すのに必要な資金はざっと2000億円あれば足りる。

 ゴーン氏とケリー氏が最長でも12月28日と目される勾留中のうちに、取締役会でルノー株の買い増しを提案すれば、日産に9人いる取締役の少なくとも5人の日本人が賛同する可能性がある。そうしてルノーの議決権をなくした上で、臨時株主総会を開き、ゴーン氏とケリー氏の取締役解任も決めれば、日産はルノーの支配から外れることになる。

 ここで障壁になるのが「ルノーによる不当な干渉を受けた場合に日産はルノーの承諾を得ることなくルノー株を買い増せる」という、ルノーと日産が取り交わした約束だ。

「不当な干渉」をどう判断するか

 もともと、2002年に日産がルノーに15%出資した際、ルノーと日産は「互いにこれ以上、株を買い増さないという協定を結んでいた」(同社関係者)という。それが崩れたのが仏政府が14年に株式を2年以上保有する株主に2倍の議決権を与える「フロランジュ法」を成立させ、ルノーを介して日産への経営関与を強めようとした時。日産の徹底抗戦で、ルノーと日産は15年に「日産によるルノー株の買い増し条件」を決めていた。

 もっとも、「不当な干渉」について、ルノーと日産がどう規定しているのかははっきりしない。日産の西川社長は当時、「これはあくまでも何かあった場合の措置だが、25%に引き上げる可能性はある」と述べている。ルノーや仏政府をけん制する「権利」をこの機に使わないとも限らない。

 実際に権利を行使した場合のフランス側の反発も大きいことは想像に難くない。国際的な紛争解決機関に持ち込まれれば、ブランドイメージの低下も懸念される。

 それでもルノー株を25%保有する日産側のメリットはある。長年のルノー支配下の構図から逃れ、互いに議決権を持たない株主となることで、本当の意味で対等な関係になれるからだ。この先のアライアンスの組み方について、時に提携解消をちらつかせながら、日産はルノーと交渉できるようにする。それこそが、1999年から協業を深め、2016年に加わった三菱自動車を含めた3社連合の力を発揮する近道といえる。合併で失敗した自動車メーカーは多い。日産がその轍(てつ)を踏まない知恵を絞りだせるかが今後の焦点になりそうだ。

日経ビジネス2018年12月3日号 10~15ページより目次

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