本格調査に乗り出す直前の5月、日産では不可解な人事があった。CFO(最高財務責任者)だったジョセフ・ピーター氏の辞任だ。ピーター氏は09年、米ゼネラル・モーターズから日産の門をたたいた幹部社員。ゴーン氏との関係も深かっただけに、社内では「何があったのか」といぶかる声も上がった。

ゴーン氏は世界各地に豪邸を構えていた。
ゴーン氏は世界各地に豪邸を構えていた。
ゴーン氏が利用していたブラジル・リオデジャネイロの住宅(写真=共同通信)
<span class="fontBold">フランス・パリの住居</span>(写真=共同通信)
フランス・パリの住居(写真=共同通信)
<span class="fontBold">カンヌ国際映画祭に参加したゴーン氏</span>(写真=Shutterstock/アフロ)
カンヌ国際映画祭に参加したゴーン氏(写真=Shutterstock/アフロ)

 日産幹部は「急に辞任した。辞めた理由すら聞かされていない」と話すが、ある関係者はこんな指摘をする。「ゴーン氏の不正の追及が始まっていたとすると、出費を管理するCFOが関わっていないのは不自然。身の危険が迫っていると考え、逃げた可能性もある」

 ひそかに進んだ内部調査。西川広人社長兼CEOらは6月に「司法取引」が導入されるのをにらみ、司法当局とも協議に入った。捜査に必要な書類を提出すると同時に、不正行為に関わった従業員の刑の減免を約束してもらう取り決めもしたもようだ。

 日産と当局がタッグを組みながらの内部調査で様々な疑惑が浮上したようだ。ゴーン氏が手にした役員報酬額を有価証券報告書に正確に記載していないことに加え、ジーアを通じて、ゴーン氏の両親のルーツがあるレバノンや、生まれ育ったブラジルなどで住宅を購入し、ゴーン氏の「自宅」として使うといった「投資資金の流用」、会社の資金で家族を旅行させたといった「経費の私的流用」の疑いだ。西川社長は8月には詳細な説明を避けながらも「重大な問題が生じている」と複数の経産省幹部に耳打ちしていた。そして11月19日。特捜部はゴーン氏が来日するタイミングで、役員報酬の虚偽記載容疑での逮捕に踏み切った。

 11年3月期から15年3月期まで5期分の役員報酬、計約50億円を有価証券報告書に記載しなかった容疑だ。特捜部はゴーン氏が毎年10億円を退任後に受け取る契約を日産側と交わしたことを問題視しているもよう。これを支払いが確定している報酬と捉え、有価証券報告書に記載すべきとの立場だ。

 11月26日時点では、逮捕されたゴーン氏とケリー氏はこの容疑を否認しているという。ゴーン氏は自らの報酬を有価証券報告書に少なく記載する意図はなかったと主張。ケリー氏に至っては、ゴーン氏の退任後に報酬を支払う計画自体は認めた上で「適切に処理した」とし、「外部の弁護士や会計士にも相談して適法と判断した」などと周囲に語っているようだ。

9人のうち日本人は5人
●日産自動車の取締役
9人のうち日本人は5人<br /><span>●日産自動車の取締役</span>