その“悪夢”がよみがえるのか。ゴーン氏逮捕の翌日の11月20日、日本政府は早速、仏政府にメッセージを送った。動いたのは日産が本社を置く神奈川県横浜市を地盤とし、かねて日産とパイプを持つ菅義偉官房長官。菅氏はフロランジュ法の際にも、経済産業省などに対応策の検討を指示するなど、日産の後ろ盾となっていた。

 この日、菅氏は日産の渉外担当の川口均専務執行役員を首相官邸に呼び、ゴーン氏逮捕の経緯について説明を受けた。「また、仏政府はルノーと日産を統合させると強く迫ってきかねない」。こう危惧したためだ。

 川口氏は会談後、記者団に日産とルノー、三菱自動車の3社連合について、「アライアンスの将来にプラスに働くように進めていく。菅長官にサポートしていただけるという理解でいる」と語った。菅氏はこの後の記者会見で、「政府として、できることがあれば対応する旨を申し上げた」と強調。あえて日産幹部との面会を公にすることで仏政府の動きをけん制した形だ。

 フランス側も黙っていない。11月25日、3日前に世耕氏と会談したばかりのルメール氏が仏ニュース専門テレビBFMTVのインタビューの中で、3社連合のトップについて、これまでの方針に沿って「ルノーのトップが務めることが望ましい」と述べた。

 ルメール氏が想定しているのは、3社連合の実質的な統括会社「ルノー・日産B・V」(オランダ・アムステルダム)のトップ人事。ルノー会長でもあるゴーン氏がトップを務めているが、「ルノートップが統括会社トップを兼ねる」というルールがあるとされる。今のアライアンスの枠組みを維持し、ゴーン氏が離れた後もルノーがアライアンスの主導権を握り続ける──。ルメール氏の発言の狙いは、仏側の立場を改めて説明することにあったとみられる。

 日産が11月22日の臨時取締役会でゴーン氏の会長職と代表取締役の解任を決めたのに対し、ルノーは「(不正の)証拠を持っていない」としてゴーン氏の会長兼CEO(最高経営責任者)の解任は見送った。ナンバー2のティエリー・ボロレCOO(最高執行責任者)を暫定トップに就かせたが、今後、ゴーン氏がルノーでも解任され、ボロレ氏が正式にルノートップとなれば、仏側が同氏に3社連合を束ねさせようとするのは確実だ。

 こうしたルノーの動きに日産も神経をとがらせる。ゴーン氏の後任となる日産の会長は、新たに設置する取締役3人で構成される委員会で、現取締役の中から提案することを決めている。仏側が何を言おうと、ルノー側からの新たな候補者は不要、というわけだ。

 1999年に2兆円の有利子負債を抱えて経営危機に陥った日産にルノーが約6430億円を出資したことで始まった両社のアライアンス。その土台をゴーン氏の逮捕劇が揺らす。役員報酬額の過少申告の容疑がかかるゴーン氏。そもそも、何が問題になったのか。

疑惑の本格調査は6月から

 日産関係者によると、ゴーン氏と、側近のグレッグ・ケリー氏の不正疑惑の調査が本格的に始まったのは今年の6月だった。社内から不正に関する内部通報があったことに加え、2010年に日産がオランダに約60億円を投じて設立した「ジーア」が、当初目的としていたベンチャー投資をしていないのでは、と監査役から指摘を受けたことが発端だったという。

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