称賛を浴びてきたカリスマ経営者から一夜にして容疑者となったカルロス・ゴーン氏。水面下では日本とフランスの両政府を巻き込みながら、仏ルノー、日産自動車の主導権争いが始まっている。もっとも、ゴーン氏逮捕の余波はそれだけではない。ゴーン氏が浮かび上がらせたのは日本の役員報酬開示の闇だ。

カルロス・ゴーン氏(右)の逮捕で、日産自動車の西川広人社長(中)とルノーのティエリー・ボロレCOO(左)の駆け引きが激しくなる(写真=左:Anadolu Agency/Getty Images、他2点:Bloomberg/Getty Images)

アライアンスにあつれき

 仏ルノー・日産自動車・三菱自動車を率いてきたカルロス・ゴーン氏の逮捕から11月26日で1週間。逮捕直後に急落したルノーと日産の株価も徐々に回復し、株式市場は冷静さを取り戻したようにもみえる。だが、水面下では日仏政府を巻き込んでのルノーと日産のつばぜり合いが始まっている。

 11月22日、フランス・パリ。2025年国際博覧会の開催国を決める博覧会国際事務局の総会に出席するため、同地に降り立った世耕弘成・経済産業相がまず向かったのは、ブリュノ・ルメール経済・財務相の元だった。

ゴーン氏逮捕後に 日産とルノーの株価は急落
●日産とルノーの株価(終値)

 約40分の会談は、もともと万博の大阪誘致への支持を取り付けることが目的だったが、日産とルノーの提携の行方についても意見交換した。会談後、世耕氏は「今後のアライアンスのあり方については、関係者が合意、納得のうえで進めることが重要だと思っている」と述べ、この問題に対する政府側の積極的な関与は避けるべきだ、とクギを刺した。

 背景にあるのは仏政府の“前のめり”な姿勢だ。前任のオランド政権で経済・産業・デジタル相を務めていたエマニュエル・マクロン大統領は、経済復興を最大の課題に掲げて大統領に選出されたものの、国内経済には改善が見られず、フランスの失業率は9%を超える水準だ。仏調査会社の直近の世論調査では、支持率は25%まで低下している。そうした中でルノーと日産のアライアンス関係が崩れ、国内の雇用に影響を与えれば、仏世論に「失点」と見なされかねない。

 仏政府には“前科”がある。14年4月に成立させた「フロランジュ法」。株式を2年以上持つ株主に2倍の議決権を与える内容で、ルノーの大株主の仏政府はルノーにも適用しようとした。

 これまでもルノーの工場で日産車の生産を求められてきた日産側はさらなるフランス側の経営介入に危機感を募らせた。この時は日本政府の支援も得ながら、15年12月に仏政府が日産の経営に関与しないことで合意させた。