群雄割拠のキャッシュレス決済を舞台に、特許を巡る紛争の火種がくすぶる。QRコード決済でヤフーが自社の特許を他の事業者が侵害していないか、水面下で調査を続けている。LINEや楽天などIT企業のほか既存金融が参入する急成長分野だが、知財係争も増えそうだ。

<span class="fontBold">ヤフーは店に掲示したQRコードを読み取る決済方式に関する特許を取得</span>(写真=陶山 勉)
ヤフーは店に掲示したQRコードを読み取る決済方式に関する特許を取得(写真=陶山 勉)

 政府が普及推進の旗を振るキャッシュレス決済。代表的な手段の一つ、QRコード(2次元バーコード)決済を巡って特許紛争の火種がくすぶっている。関連特許を取得しているヤフーが、同様のサービスを展開している他社について特許権の侵害がないか調査していることが本誌の取材で分かった。

 QRコード決済はスマートフォン(スマホ)のアプリを利用し、銀行口座やクレジットカードなどの情報を登録しておけば加盟店での支払いに使える。その方式は2通りある。まず消費者が自分のスマホアプリにQRコードを表示して加盟店の読み取り機にかける方式。もう一つは加盟店が紙に印刷するなどして用意したQRコードを消費者がスマホのカメラで読み取る方式だ。

 今回、焦点となっているのは「印刷式」などと呼ばれる後者。この方式に関してヤフーは、基本的な仕組みに関わるビジネスモデル特許を含め、金額の入力方法など複数の特許権を取得・申請しているとの立場をとっている。

 成立済みの特許は、特許庁への出願日に遡って効力を発揮するのがルール。現時点では「他社が当社の特許に抵触しているかどうかを知財部門が調査している」と述べるにとどめるヤフーだが、特許の出願日である2017年1月18日以降に他社が始めたサービスが特許に抵触していると判断すれば、特許料の請求や提訴などに踏み切る可能性があるのだ。楽天やベンチャー企業のオリガミ(東京・港)が印刷式に対応したのは17年10月で、ヤフーの出願後。LINEは開始時期について「知財戦略上、回答を控える」としている。

QR決済、23年度に8兆円市場

 注目を浴びるキャッシュレス決済の中でもQRコード決済は急成長が見込まれている。日本能率協会総合研究所の調査によると国内市場規模は23年度には8兆円まで伸びる見通し。19年秋から全国の銀行や地域金融機関が連携してQRコード決済サービスに乗り出すとの報道もある。

各社の参入で急成長が予想される
●国内のQRコード決済市場規模予想
(日本能率協会総合研究所調べ)
各社の参入で急成長が予想される<br /><span>●国内のQRコード決済市場規模予想 <br />(日本能率協会総合研究所調べ)</span>

 また、消費者がスマホのカメラを使ってQRコードを読み取る印刷式は店舗側が設備を用意せずに済むので、小規模事業者にも利用が広がると期待されている。海外ではストリートパフォーマーへの投げ銭や寺院への賽銭にも使われ、手軽な決済手段として認知されている。

 ただ、ヤフーがQRコード決済に本格参入したのは今年10月とまだ最近のこと。兄弟会社のソフトバンクと折半出資する「ペイペイ」を通じてサービスに乗り出したが、約1年前に開始した楽天や先行するLINEなどと比べると出遅れている。海外では中国のアリババ集団が「アリペイ」の名称で広く展開しており、日本でも訪日客向けに18年1月から始めている。