「アメリカファースト」を掲げ、保護主義を打ち出してきたドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。米国が中心となって進めてきた、各国との自由貿易の枠組みが変わる可能性が高まっている。日本で最も影響を受けるのが自動車産業。この数年でメーカー各社が投資してきたメキシコに暗雲が垂れ込める。

メキシコからの輸出車を港で降ろす様子。メキシコは自動車の輸出大国になった(写真=Paulo Fridman/Getty Images)

 11月11日、在日メキシコ大使館で同国への進出を支援するセミナーが開かれた。会場はほぼ満員。質疑の時間となり、最初の質問者がこう切り出した。「トランプ氏は北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを公約に掲げている。どう考えればいいのか」。

 大使館の担当者は、メキシコ政府が大統領選後に出した「NAFTAの現代化を追求したい」との公式声明を繰り返すのみ。「メキシコへの関心事はポテンシャルからリスクに変わった」。ある参加者はこう漏らして会場を後にした。

世界最大の自動車輸入国

 「アメリカファースト」。ドナルド・トランプ氏は自国最優先の政策を公約として掲げ、大統領選を制した。その言葉通り、「就任初日に宣言する」と約束した7項目のうち4つが「NAFTAの再交渉もしくは撤退」「TPP(環太平洋経済連携協定)からの撤退」など保護主義色の濃い通商政策だった。

 自由貿易から保護貿易へ──。反グローバリズムのあおりを最も受けるのが自動車産業だ。

 今や米国は世界最大の自動車輸入国。最大の輸入元が、NAFTA加盟国のメキシコ(195万台)だ。トランプ氏は大統領選出馬表明直後に「メキシコで生産した自動車を米国で売ろうものなら35%の関税を掛ける」と明言。メキシコに新工場を建設する計画のあった米フォード・モーターを批判した。

 「私が大統領になったら絶対にそんなことは許さない」。トランプ氏の主張は、メキシコに雇用を奪われたと感じる労働者の票を集めたとされる。

米国は世界最大の自動車輸入国
●米国を中心とした主要地域の輸出入の関係
注:円の大きさと数字は生産台数から販売台数を差し引いた台数。各国・地域内の在庫などを含む。赤は輸入超過、青は輸出超過。ASEAN5はインドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム
出所:各国・地域の自動車工業会の資料を基にみずほ銀行作成