日本郵船、商船三井、川崎汽船の3社は、コンテナ船事業を統合すると発表した。市況の低迷に加えて、世界各地での保護主義の台頭など、長期的に貿易が低迷する構造変化も起きている。1999年から続いたコンテナ船の国内大手3社体制は、ついに1社に集約されるが、今後の見通しは厳しい。

<b>左から、川崎汽船の村上英三社長、商船三井の池田潤一郎社長、日本郵船の内藤忠顕社長</b>(写真=共同通信)
左から、川崎汽船の村上英三社長、商船三井の池田潤一郎社長、日本郵船の内藤忠顕社長(写真=共同通信)

 「資本効率から考えれば、各社のコンテナ事業を統合した方がいい。でも三菱系の日本郵船と、三井系の商船三井など財閥や企業文化が違うから現実的には難しい」。これまで海運業界を担当する国内証券アナリストは、3社体制に集約された業界で、さらに再編・統合が進む可能性は低いと見ていた。

 また食品や日用品、製品の部材などを運ぶコンテナ事業は、海運各社の主力事業で売り上げ規模も大きく、手放しにくい事情があった。

 こうした大方の予想を裏切る再編だった。日本郵船と商船三井、川崎汽船の海運3社は10月31日、コンテナ船事業を統合すると発表した。3社で約3000億円を出資して新会社を設立し、売上高は単純合算で約2兆円となる。

 船隊規模は合計およそ140万TEU(20フィートコンテナ換算)になり、スケールメリットを働かせることで、年間1100億円の統合効果を見込む。

 「現在の海運事業を巡る構造変化に対する見解が3社とも同じだった」

 同日、川崎汽船の村上英三社長は、記者会見でこう語った。3人のトップの言葉は、待ったなしの状況に追い込まれた、危機感がにじんでいた。各社が単独でコンテナ事業を立て直すシナリオがもはや描けなくなっていた。

 海運のコンテナ事業は戦後、10社以上が立ち上がり、その後の不況で1964年に中核6社に絞られた。99年に3社体制に再編され、今回の統合で2017年7月から1社だけになる。

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