衆院選で与党が圧勝し、再び憲法改正発議に必要な3分の2を超える議席を獲得した。政権基盤を固め直した安倍晋三首相は北朝鮮対応や経済政策とともに改憲論議に注力する構えだ。ただ政治姿勢への批判は根強く、政権運営は楽観できない。多様な政策課題を進める手綱さばきが問われる。

<span class="fontBold">想定外の展開にもかかわらず再び勝利を引き寄せた安倍首相</span>(写真=日刊現代/アフロ)
想定外の展開にもかかわらず再び勝利を引き寄せた安倍首相(写真=日刊現代/アフロ)

 安倍晋三首相の電撃的な衆院解散の決断に続く小池百合子東京都知事の参戦、そして野党のドタバタ劇に関心が集まった今回の衆院選。ふたを開けてみれば、自民、公明の与党が310議席を超える議席を獲得し、憲法改正に前向きな勢力は希望の党、日本維新の会を合わせ改憲の発議が可能となる3分の2を大きく上回った。

 北朝鮮への圧力重視の対応継続や、2019年10月の消費税率引き上げ時の使途変更について信を問うと宣言した安倍首相。有権者が安倍政権の継続を現実的な選択肢として判断したのは確かだが、勝敗をより決定づけたのは野党の自滅だった。

一番の勝因は「野党の自滅」

 安倍首相は街頭演説で、北朝鮮問題や経済を中心とする政権運営の実績に力点を置き、小池氏への個人攻撃や憲法改正への言及をほぼ封印。こうした「野党の土俵に乗らない戦略」(安倍首相周辺)が奏功した面もあるが、自民幹部は「希望の党の失速と野党候補の乱立という敵失に助けられたのがより大きな勝因だ」と指摘する。

 小池氏が解散直前に希望を立ち上げ、民進党の前原誠司代表が希望との合流にかじを切った展開は安倍首相には想定外だった。与党内には一時危機感が広がったが、小池氏が民進から合流を目指す前衆院議員の一部を「排除する」などと発言したことを契機に希望の支持に急ブレーキが掛かった。

 「政権獲得を目指す」としながら希望は過半数ギリギリの候補しか擁立できず、首相候補や実現可能で地方にも響く政策を示せないまま選挙戦に突入した。「主演女優の小池知事が出馬せず、舞台に上がらなかったことが最大のダメージ」と希望関係者は嘆く。

 頼みの無党派層が離れ、小池氏が地盤とする東京で希望が小選挙区で勝ち上がったのは1人だけ。「これまでは空中戦でやってきたが、小選挙区ではそれだけではだめだった」。投開票日に訪問先のパリで力なく語った小池氏。責任論が湧き上がり、都知事選から続いた「小池劇場」は閉幕の時を迎えた。

 自民の勝利をもたらしたもう一つの要因は野党の候補者乱立で政権批判票が分散したことだ。「寄り合い所帯」と称された野党第1党の民進が希望や立憲民主党、無所属に分裂し、目指すべき基本理念や政策を軸に各党や勢力の違いが分かりやすくなったのは確かだった。だが、過去数回の国政選挙と同様、結果的に野党同士で食い合うことで自民に有利に働いた形だ。

 一方、北海道、新潟など事実上の与野党一騎打ちの構図になった選挙区では野党系候補が競り勝つケースも少なくなかった。「野党がボタンを掛け違えずにまとまれば、政権交代はあり得たと思った」。選挙の顔として全国を飛び回った自民の小泉進次郎筆頭副幹事長は民放番組で実感を込めてこう話した。

 野党系議員の間ではさっそく統一会派構想や再編への動きが出ている。選挙のたびに右往左往し、政権批判の受け皿機能が弱まる構図が繰り返された。政権交代可能な野党確立への道のりは遠のいたとの見方が広がる。

 希望の戦術ミスや野党勢力の敵失にも助けられる形で12年の衆院選以降、国政選挙で5連勝に導いた安倍首相。都議選大敗などで揺らいだ政権基盤をひとまず固め直した格好だ。

 安倍首相の側近議員は「これで来年9月の総裁選へ弾みがついた」と語る。総裁選で3選を果たせば、21年までの任期を手にする。憲政史上最長の「超長期政権」が視野に入ったわけだが、「安倍1強」と称された盤石の状況に戻るのかと言えば事はそう簡単ではない。

次ページ 有権者は「消極的支持」