昨年末、電通の女性新入社員、高橋まつりさん(当時24歳)は過労で自ら死を選んだ。本誌が実施した緊急アンケートにより、日本企業にはびこる違法残業の実態が明らかになった。長時間労働に頼ることへの弊害は明らか。すぐにでも実効性のある見直しに着手すべきだ。

電通の立ち入り調査に向かう労働基準監督官(写真=朝日新聞社)

 「電通社員の過労死では、働き過ぎによって貴い命を落とされた。こうしたことは二度と起こってはならない」

電通本社(東京都港区)(写真=朝日新聞社)

 安倍晋三首相は10月13日、首相官邸で開かれた「働き方改革に関する総理と現場との意見交換会」の冒頭、こう発言した。東京労働局などが電通の本社や支社を一斉に立ち入り調査したのは、その翌日のことだった。

 調査に入ったのは、東京労働局の過重労働撲滅特別対策班(かとく)など。かとくは2015年に発足し、これまでにエービーシー・マートやドン・キホーテなどを調査し、会社のほか役員や執行役員を書類送検したことで知られる。

 電通では1991年にも男性若手社員が過労自殺し、最高裁が2000年に会社の責任を認めた。国の判断基準が見直される大きなキッカケになった事件だ。電通はこの時、再発防止に努めると誓っていたが果たせなかった。

形骸化した勤怠管理

 遺族代理人の川人博弁護士の集計によれば、高橋まつりさんは月曜午前6時5分~火曜午後2時44分、続けて同午後3時1分~水曜午前0時42分まで働いていたこともあったという。電通では社員が勤務時間をシステムに自ら登録し、上司が承認。ゲートによる入退館情報と齟齬がないかチェックしていた。だが、これらの対策は形骸化していたとみられる。

 高橋さんの申告した残業時間は昨年10月に69.9時間、同11月に69.5時間。労使で合意した「36協定」による、1カ月当たり労働時間の上限は所定外70時間(法定外50時間)で、これを意識して過少申告していた可能性が高い。電通は今回の問題を受け、今年11月から上限を所定外65時間(法定外45時間)に引き下げることを決めたが、どこまで実効性があるかは不透明だ。

 三田労働基準監督署は高橋さんの時間外労働時間は昨年10月9日~11月7日で約105時間に及んでいたとして、労災認定した。電通は「適切な勤務登録および承認の徹底を図っており、協定時間を超過した勤務時間を上限時間内に収めるような指示はしていない」とコメントした。