スズキが狙う「富士重モデル」

 「スズキが狙うのは共同調達などによるコスト削減ではなく、富士重工業が得たような先進技術だろう」。大手自動車部品メーカー幹部はこう推測する。トヨタと富士重が資本提携したのは2005年。富士重はハイブリッド技術などをトヨタから学ぶ一方で、「アイサイト」など安全分野の独自技術を進化させ、2016年3月期には過去最高益をたたき出した。

 トヨタにとって、インドや東南アジアで高いシェアを持つスズキとは補完関係を築きやすい。インドネシアなどで競合する三菱自動車の白地浩三副社長は「スズキもダイハツも従来以上に力を入れてくるだろう」と警戒する。

 それでも豊田社長は会見で海外での協業についてはさほど触れず、「開拓精神は学びたいが、(海外でスズキの販路を)活用するという気持ちでは大変失礼だと思っている」と発言。海外事業を提携の柱にする気持ちがないことをにおわせた。

 それではトヨタ側の意図は何か。豊田社長が繰り返した「仲間作り」というキーワードから、トヨタの2つの狙いが浮かび上がる。

 一つは「つながるクルマ」時代への布石だ。クルマとクルマが双方向でつながった際、サービスの価値を決めるのは接続されている総台数になる。

 例えばスウェーデンの乗用車大手ボルボ・カーは、最大市場である母国のニーズを考えたサービスを既に実用化している。クルマのセンサーで得た道路の凍結箇所をクラウドに集め、その情報を他のボルボ車に送るというものだ。まだ一部の車種に限られるが、順次適用範囲を広げる予定だ。

 独自動車メーカーが共同で自動運転用の地図サービスを検討しているのも、接続台数が地図の精度に直結するため。従来は開発・製造コストの削減に寄与してきた提携を通じた「規模の経済」の意味が変化しつつあるのだ。

 今後、トヨタとスズキがつながるクルマのインフラを共有すれば、インドなどに加え、国内で軽自動車しか入れないような狭い道の情報も手に入る。豊田社長が会見で国内の道路の85%に中央車線がないことに触れ、「クルマは道がつくる」と話したのもそのためだ。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1242文字 / 全文文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「時事深層」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。