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制服やトイレまで気を配る

 7月の有効求人倍率(パート含む)は、全職種の平均が1.42倍だったのに対し、飲食物調理は3.21倍、接客・給仕は3.93倍。「『きつい、きたない、給料安い』という3Kのイメージを払拭しなければ人材は集まらない」と語るのは、焼き鳥チェーン鳥貴族の大倉忠司社長。昨年8月には昇給のチャンスを増やす新人事制度を採用した。関東で中華料理チェーン「日高屋」を運営するハイデイ日高もパート・アルバイトを対象にした定期賞与を導入するなど、待遇改善を急いできた。

 鳥貴族は増え続ける人件費を捻出するため、昨年10月にメニューの均一価格を「298円(税別)」にする18円の値上げに踏み切った。だが、今年9月には既存店売上高が前年同月の86.9%に落ち込むなど苦戦。ハイデイ日高も18年3~8月期は増収だったものの、7年ぶりの営業減益となった。4月に実施したパートの時給引き上げが響いた。

 求人難を打破するために待遇改善は避けて通れない。ただ人件費には限りがある。いちよし経済研究所の鮫島誠一郎主席研究員は「働き手の気持ちに配慮した、金銭面以外のプラスアルファの魅力をいかに打ち出せるかが、人材獲得競争のカギを握る」と指摘する。

 サイゼリヤは今年、制服のデザインを刷新し、着る人の性別や年齢を選ばない“シック”なデザインに改良した。さらに、国内のトイレがある店舗の8割で、汚れにくく掃除の手間やストレスを減らせる新型のトイレを導入した。

 日本マクドナルドは週2時間から働ける勤務体系で、隙間時間を活用したい主婦の獲得を狙う。「外食業界の中では時給が比較的低いことで知られるが、柔軟なシフトを認めることで、働き手をしっかり確保している」(鮫島氏)

 マクドナルドは14年に家族連れの客や従業員のため全店全席を禁煙にしたことで知られる。6月には串カツ田中がほぼ全店で全席禁煙に踏み切った。“煙害”対策で働きやすい環境をつくり、離職率を引き下げる。

 業務を省力化する現場の見直しも求められる。「細かな“カイゼン”を積み重ねる効率化は限界に達しつつある」(外食大手関係者)。吉野家HDは、レジで料金を先に払い、配膳と下げ膳を客が担う店舗を、20年2月期から年間100店ペースでオープンする。店内業務を1割弱減らせるという。天丼チェーンのテンコーポレーション(東京・台東)は10月2日、完全キャッシュレス化で現金を扱う業務をゼロにした新業態店を東京・浅草にオープンした。

 未曽有の人手不足の克服には大胆な業務改革と従業員へのこまやかな配慮が欠かせない。しなやかな経営判断が何よりも求められている。

人件費高騰に克つ!
●「時給+α」の人材確保策の例
  • 「プチ勤務」を可能にする
  • 制服のデザインを刷新
  • 店舗内を全席禁煙化
  • トイレを快適にする

(吉岡 陽)

日経ビジネス2018年10月22日号 14~15ページより目次