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人手不足による人件費の高騰で、吉野家ホールディングス、サイゼリヤなど外食大手が業績に打撃を受けている。共通するのは「増収減益」だ。足元の客数は堅調で事業は好調なのに、店舗運営のコストが上がり利益が増えない。稼いでももうからない苦境から脱するには、大胆な省力化と従業員へのこまやかな心遣いがカギを握る。

(写真=上:時事通信フォト)

 ファミリーレストラン大手、サイゼリヤが10月10日に発表した2018年8月期の通期決算は最終利益が前の期比約32%減った。減益は4期ぶりだ。「カレーハウス CoCo壱番屋」を運営する壱番屋も5日に発表した18年3~8月期中間決算は、最終利益が同約5%減。いずれも主な要因として、深刻な人手不足による人件費の高騰を挙げている。

 極め付きは吉野家HDだ。5日発表の18年3~8月期中間決算は食材価格の上昇や店舗のリストラなどのコスト増に人件費高騰が追い打ちをかけ、11年2月期以来、8年ぶりに上期が最終赤字に転落。売上高販管費率は約64%で15年前より12ポイントほど高い。販管費に占める人件費の割合もおよそ50%と「18年2月期より数ポイント上昇」(吉野家HD)しており、19年2月期も通期で6期ぶりの最終赤字を見込む。

時給比較で働き手が移り気に

 3社とも「増収」なのに「減益」となった。主力業態の既存店売上高は、吉野家HDと壱番屋が前年同期を上回り、サイゼリヤも同99%。その半面、多くの客をさばくために従業員を手厚く配置しなければならず、パートやアルバイトの時給が上昇の一途をたどる。

業容を順調に広げているが利益急落
●吉野家HDの業績推移

 リクルートジョブズ(東京・中央)の調査(上のグラフ)によると、三大都市圏では8月、飲食店のパート・アルバイトの募集時平均時給が、職種別の集計を始めた11年1月以来の最高額を更新。初めて1000円の大台を超えた。「地方でも最低賃金の上昇などによって、急速に時給が上がっている」(サイゼリヤ)という。

 好調な売り上げを背景に、大手各社が出店を拡大していることも人件費の上昇圧力を強めている。日本フードサービス協会によると、約800加盟社の8月の店舗数は前年同月比0.7%増で、22カ月連続のプラスになった。店が増え続ければ働き手の争奪戦も過熱する。吉野家HDは今期中に国内で88店舗を純増させる出店攻勢をかけており、パート・アルバイトの求人広告の出稿や教育研修などのコストも膨らんだ。

 リクルートジョブズ経営統括室の小野由美子氏は人件費の上昇が止まらない背景に「働き手の意識変化もある」と指摘する。「スマートフォンで手軽に閲覧できる求人情報サイトが普及し、時給の比較が容易になった。働き手が少しでも時給が高い同業他社に乗り換える傾向が強まっている」と見る。移り気な働き手をつなぎ留めるために、労働単価をジリジリと引き上げざるを得ない「『完全な』売り手市場になった」(大手外食関係者)というのが現状だ。

日経ビジネス2018年10月22日号 14~15ページより目次