個人の能力と人脈で集める情報を武器にしてきた商社が、危機感を募らせている。「データ」が競争力を左右するAI(人工知能)時代に、伝統的な商社は生き残れるのか。ヘルプデスクでの活用から新規事業の立ち上げまで、全方位で次世代の成長モデルを模索し始めた。

 三菱商事と三井物産が、競うように全社的なAI(人工知能)の活用に動き出している。三菱商事は今年4月、最高意思決定機関である社長室会の下に「AI/IoT推進会議」を設置。三井物産は5月、「DT(デジタルトランスフォーメーション)チーム」を立ち上げ、同チームを管掌するCDO(最高デジタル責任者)を新設した。

AIの全社的活用を目指し、三菱と三井は担当役員を置いた
●三菱商事と三井物産のAI活用の概要
三菱商事 常務執行役員
戸出 巌氏
(写真=陶山 勉)
三井物産 常務執行役員CDO
北森 信明氏
(写真=陶山 勉)
全ての産業に接点を持ち、そこから集まる情報は宝だ。だが、まだAIで活用できるデータにはなっていない。情報を質と量の両面で生かすために、営業部門にIT人材を配属するなど、AI/IoTをフル活用してビジネスモデルを変革していく。 この先、商社がどう変わるのかは誰にも分からない。だから、まずは現場でトライする。本社で予算を確保し、課題を洗い出し、営業部門からも提案を募って実証実験を支援する。現場が日々の業務に埋没しないよう、しつこく旗を振り続ける。
主な取り組み
主な取り組み
●部門横断の「AI/IoT推進会議」設置
●ITヘルプデスクや人材採用、投資判断の支援など
●ドローン画像の解析による農業の効率化や鉱山の遠隔操業支援なども検討
●CDO(最高デジタル責任者)を設置
●部門間の情報共有や議事録作成の支援、定型業務の自動化など
●AIベンチャーへ出資。変動値付け支援サービス事業への進出など

 背景には、商社ならではの危機感がある。商社は、優秀な人材と人脈から集まる情報が、競争力の源泉だと自ら考えてきた。だが、産業界にAIが普及すると、こうした商社の強みも、価値が低下するかもしれない。三井物産の北森信明・常務執行役員CDOは、「コンピューターの能力が急速に高まり、従来不可能だったことがどんどんできるようになっている。この流れに対応しないと競争力が失われる」と話す。三菱商事でAI/IoT推進会議を管掌する戸出巌・常務執行役員も、「変革しないと明日の三菱商事はない」と言う。