燃費・低価格競争一辺倒だった自動車の国内販売に変化が表れている。ここ数カ月で各社が発売した新型車は、価格を維持しながら安全運転支援などの新技術を搭載する。もはや止めることのできない需要低迷を打開する特効薬となり得るか。

日産自動車の東京・銀座のショールームではSUVの展示が観光客に人気(写真=つのだよしお/アフロ)

 9月24日、東京都中央区の銀座四丁目交差点に新スポットが誕生した。リニューアルオープンした日産自動車のショールーム「NISSAN CROSSING(ニッサン クロッシング)」。コンセプトカーが回るショーウインドーの前で、中国人観光客がピースサインを作っていた。

 「人が集まる場所に出ていかないと顧客との接点が減ってしまう」

 日産の星野朝子専務は開業前日の記者発表会で、新施設の役割をこう説明した。同社は10月6日、神奈川県平塚市に開業する「ららぽーと湘南平塚」へも出店。大型商業施設内の常設販売店は初めてで、これまで路面店が中心だった立地戦略を変えようとしている。

2016年度の需要見通しを下方修正
●国内需要台数の推移
注:輸入車を含む。2003年度以降は登録車の分類基準をシャシーベースからナンバーベースに変更
出所:日本自動車工業会

 背景には、回復の兆しが見えない国内需要の低迷がある。2015年度の国内新車販売台数は約494万台で、4年ぶりに500万台を下回った。日本自動車工業会は9月15日、2016年度の見通しを41万台下方修正して484万5200台とした。来年4月に予定されていた消費増税が延期され、駆け込み需要がなくなったことが大きい。

 国内シェアで約5割を占めるトヨタ自動車も安泰ではない。昨年12月に発売した新型「プリウス」は、今年8月まで8カ月連続で月間販売台数の車種別ランキングの首位をキープしているが、8月の販売台数は7月の2万7988台から1万7503台に落ちた。2万台を割ったのは、愛知製鋼の工場爆発の影響で生産が減少した今年2月以来では初めてだ。

 パイが縮む中で、消費者の選択基準も変化している。自動車メーカー各社の最新モデルからは、競争の軸が「燃費」「価格」から「安全技術」や「自動運転技術」へシフトしたことが分かる。