アベノミクス初期並みの買い
日銀がETF買いに動く場合、1日当たりの金額は707億円と、従来の330億~350億円から大幅に拡大した。8月の東京証券取引所1部の平均売買代金の約4%に及ぶ規模で「日銀が買いに入るかを過度に意識した売買が続いた」(松浦ストラテジスト)。
日銀は当面、買い進める一方で、売りには回らない存在。銀行系証券トレーダーは「積極的に売り仕掛けにくくなっている」と話す。下値が堅く、崩れにくい相場。日経平均の価格変動予測を示す「日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)」は8月以降に大幅に低下する場面があった。
そもそもETF買いの狙いは、株価を下支えすることで、上場企業や投資家がリスクを取りやすい環境を作ることにある。積極的な設備投資につながり、日銀が目標とする物価上昇へと向かう算段だ。
しかし、年6兆円という大規模な買い入れは、アベノミクス開始時の2012年12月~2013年4月に日経平均が4000円強上昇した際の外国人投資家の買越額(7.6兆円)に匹敵する。しかも購入する過半のETFは日経平均に連動したタイプとみられ、指数を構成する225銘柄の保有割合は特に高くなりやすい。
●日銀による間接的な株式保有割合

ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストの試算によると、来年7月には日銀が10%超の株式を間接保有する企業が20社以上にのぼるという。
株式市場で存在感を増す「大株主日銀」に対しては、負の側面も意識される。最も指摘されているのが市場の価格形成機能をゆがめる点だ。企業ごとの経営内容を選別せずに株式が一様に買われるため、業績が悪くても株高となる銘柄が足元では出始めている。
影響を調べるために、ETF買い入れ枠拡大への思惑が高まった7月以降で個別銘柄の株価の動きを見てみよう。
電子部品を手掛けるミツミ電機は日銀の保有比率が7月末時点で11%強と全体で最も高い。来年の7月には比率は20%を超え、株式を直接保有していたならば持ち分法適用会社となる規模まで膨れ上がる。
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