地方の観光地を中心に、中国のモバイル決済サービスを導入する動きが拡大中だ。地元金融機関や鉄道会社などが飲食店や宿泊施設への導入を後押しする。インバウンドで地域活性化を狙う地方と、自国市場の飽和に焦りを覚える中国IT企業の思惑が重なる。

中国のモバイル決済に対応する観光地が増えてきた

 「地方金融機関としてインバウンド(訪日客)ビジネスに関わり、収益につながるきっかけができたと感じている」

 こう話すのは、静岡県西部を営業エリアとする遠州信用金庫(静岡県浜松市)地域サポート部の水嶋敏成副部長だ。同金庫は取引先の飲食店や小売店、宿泊施設が中国で普及しているモバイル決済サービスに加盟するための仲介業務を始めた。6月に騰訊控股(テンセント)の「微信支付(ウィーチャットペイ)」を対象に開始、7月にはアリババグループの「支付宝(アリペイ)」も手掛けることとなった。同金庫は仲介した加盟店の決済額から一定割合を手数料として受け取ることができる。

 地方の金融機関が観光施設など地元企業に中国のモバイル決済サービスの導入を進める動きが広がってきた。京都信用金庫(京都市)や、飛騨信用組合(岐阜県高山市)も既に同様のサービスを始めることを発表している。富士急ハイランド(山梨県富士吉田市)がウィーチャットペイを全面導入したほか、JR九州がアリペイ導入に向けてアリババと提携するなど、地域経済における主要観光関連企業が導入の旗振り役となるケースも増えている。

 観光庁の統計によれば、日本を訪れる中国人観光客は2017年に730万人となった。宿泊や飲食などで日本に落とす金額も1人当たり23万円(17年)で、国・地域別で見ると最も多い。2回目以降の訪日となるリピート客は約4割と年々増加傾向にあり、東京や大阪以外の観光地にも訪れるようになった。

 地方にとっては利用者7億人という中国のモバイル決済サービスの導入はインバウンド需要を取り込む上でカギになる。こうした地方の動きに歩調を合わせるように、「現在は地方での加盟店増に力を入れている」と、アリペイを運営するアント・フィナンシャルの広報担当者は話す。

日経ビジネス2018年9月10日号 17ページより目次