新入社員が過労自殺した電通が、総労働時間の2割削減を柱とする改革案を発表した。だが日本企業の考え方を改めるのは容易ではない。新国立競技場の建設に携わる新入社員の自殺も明らかに。政府は「非常事態は続いている」として、過重労働対策を盛り込んだ「自殺総合対策大綱」を閣議決定した。

<b>約70億円を投じて労働時間削減と成果維持の両立を目指す電通の山本敏博社長</b>(写真=時事)
約70億円を投じて労働時間削減と成果維持の両立を目指す電通の山本敏博社長(写真=時事)

 「1人当たりの総労働時間を80%に削減しつつ100の成果を目指す」。新入社員が過労で自殺し、社会問題として過重労働に焦点を当てるきっかけを作った電通。7月27日、2019年度までに社員の総労働時間を2割削減しつつ同じだけの成果を出す目標を掲げた「労働環境改革基本計画」を発表した。

 まず、労働基準法の上限を超えた残業を認める「36協定」違反、各種ハラスメント、過重労働の3つについて発生ゼロを目指し、労務問題再発を防止する。併せて約70億円を投じ、人員増強や業務の効率化・自動化、人事評価制度改革などを進める。浮かせた労働時間は社員の心身を整えることや生活の充実、体験・学習などに充ててもらい、社員一人ひとりの成長を促す。

 もっとも、目指すべき理想と現実との間には矛盾も生じている。例えば昨秋から実施している午後10時以降の原則残業禁止。複数の電通社員が「サービス残業をしている」と証言する。

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