小野薬品工業の「オプジーボ」に端を発した高額医薬品問題が急展開を見せている。国家財政を食い潰す危険すらはらむだけに、厚生労働省も重い腰を上げた。画期的だが高過ぎる薬剤をどう扱うか、日本でも「命の値段」が問われる日が訪れようとしている。

 神薬か、亡国薬か──。小野薬品工業のがん治療薬「オプジーボ」を巡り、そんな議論が突如湧き起こった。

 オプジーボはがん細胞を直接破壊する従来の抗がん剤とは異なり、体が本来持つ免疫機能の力を引き出してがん細胞を攻撃する。これまで救えなかった一部の末期がん患者にも高い効果を発揮することから、発売されてしばらくは「夢の新薬」とも評された。

 風向きが変わったのは今年4月の財政制度等審議会。オプジーボの普及が進めば国の医療費負担は青天井で増大していくとの試算が出された。

 実際、オプジーボの値段は極めて高い。肺がんの場合で、一般的な日本人男性が使うと、年3500万円もかかる。高額ではあるが、国の高額療養費制度を利用すれば、患者の自己負担は、標準的所得の場合、年間100万円余りで済む。残りは公費や保険料で賄われる。

 仮に患者5万人がオプジーボを1年使用したとすると、薬代だけで年1兆7500億円もかかる。日本の年間医療費約40兆円のうち約10兆円とされる薬剤費が2割近く跳ね上がる計算だ。財制審では、試算を公表した医師が「これほど高額の薬代がかかれば、たった1剤で国が滅ぶことになりかねない」と持論を展開。以来、メディアもこの問題を大きく取り上げるようになり、期待の新薬は批判にさらされる機会が増えた。

効く患者は2~3割だけ

 オプジーボのような他に比較する対象のない画期的新薬は、製薬企業が申請する製造コストや研究開発費、営業利益などを積み上げ、それをピーク時の予想投与患者数で割って算出するのが決まり。患者数が少なければ単価は上がる。後に適応が拡大して患者が増えても、すぐに薬価を見直す仕組みは存在しない。

 オプジーボは2014年9月、患者数が年470人と極めて少ない悪性黒色腫の治療薬として承認されたため、価格が跳ね上がった。1年半後、患者の多い肺がんに適応拡大が認められ、価格が高いまま大きな市場を手に入れた。

 問題を複雑にさせているのは、オプジーボが効く人が限られていること。悪性黒色腫では3割、肺がんでは2割の患者にしか効かないとされている。そのため、効果が限定的なのに高過ぎるとの批判も根強い。

 今年7月には新たな問題も浮上した。別の種類のがん治療薬との併用などによって重篤な副作用症状が表れ、死亡例も出ていたことが明らかになったのだ。新薬に未知の副作用は付きものだが、オプジーボのように切れ味の鋭い画期的新薬なら、本来であれば慎重な使い方が求められる。