独アウディは今秋、自動車が主体的に運転する「レベル3」機能を搭載した新型車を世界で初めて発売する。競合他社に先駆けて投入できる背景には、法整備で独政府の側面支援があった。自動運転車の育成を急ぎたい政府と、ブランド回復を目指すアウディ。両者の思惑が一致した。

<b>ドイツ政府は「A8」発表の約2週間前に道路交通法を改正</b>
ドイツ政府は「A8」発表の約2週間前に道路交通法を改正

 「自動運転を一歩先に進める画期的なクルマ」。独アウディのルペルト・シュタートラーCEO(最高経営責任者)はスペイン・バルセロナで7月11日に開いた発表会で、旗艦車「A8」の自動運転機能を自賛した。

 自動運転は、自動ブレーキなどの運転支援機能を持つ「レベル1」から、運転手の要らない完全自動運転を実現する「レベル5」まで5段階に分類されている。新型A8が搭載するのは「レベル3」。運転手がハンドルを離しても自動車が運転を代行できる水準だ。

 具体的には6つの高機能センサーがクルマの周囲を解析し、自動的に加速、減速、停止などを制御して走行する。運転手はハンドルを離したまま動画を見たり、同乗者と会話したりできるようになる。「運転手がハンドルを離せないレベル2とレベル3では、自動運転の価値に雲泥の差がある」と開発担当のペーター・メルテンス取締役は言う。

 もっとも、今回搭載されたレベル3機能は、他社の追随を許さないほどの高度な技術とは言い切れない。自動運転機能の利用は混雑時に限られ、「中央分離帯のある高速道路を時速60km以下で走行している場合」という条件がつく。「技術的には、日本メーカーでも実現可能」とある日本の自動車業界関係者は言う。

 それでも、日本車メーカーがレベル3の自動運転車の投入を躊躇するのは、事故が発生した場合の責任の取り方が明確に定義されていないからだ。現状の道路交通法では、レベル3の自動走行は認められておらず、自動運転にかかわる法整備が追いついていない。

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