日本郵政による不動産大手・野村不動産ホールディングスの買収計画が白紙となった。十分な相乗効果が見込めなかったためで、M&A(合併・買収)を軸とした成長戦略自体も見直しを余儀なくされる。政府による株式追加売却への影響も避けられず、経営陣は郵便局再編など地道な構造改革の手腕を問われる。

<b>買収交渉は6月上旬に事実上、決裂していた</b>(写真=写真=2点:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
買収交渉は6月上旬に事実上、決裂していた(写真=写真=2点:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 「いかにも『行き当たりばったり』という印象だ」と、ある経済官庁の幹部は苦笑する。日本郵政は野村不動産ホールディングス(HD)の買収に向けた交渉を打ち切った。期待する相乗効果が出るのか、疑問の声が強まり、一部報道が先行して野村不動産HDの株価が急上昇したこともあって、計画を白紙に戻した。

 日本郵政が買収の検討を始めたのは昨秋。「郵政グループ全体として成長できる可能性があり、我々と似た事業分野を持つ企業なら、聖域なく対象にしたい」。今年5月に決算会見に臨んだ日本郵政の長門正貢社長は、「あくまで一般論」と繰り返しながら、M&A(合併・買収)への強い意欲を示していた。

 郵便の減少が続き、稼ぎ頭だった金融事業もマイナス金利導入の影響で減益傾向から抜け出せない。そんな中で、郵政経営陣は数千億円を投じる大型M&Aが、分かりやすい成長戦略を内外に示す絶好の手段だと考えてきた。

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