日本郵政が2015年に買収した豪物流会社の減損処理を検討していることが、日経ビジネスの取材で分かった。数千億円規模の巨額損失が出る見込みで、株式上場したばかりの郵政グループの成長戦略は岐路に立たされる。ここ数年、日本企業の海外M&Aが相次いだが、米原発子会社の損失に苦しむ東芝に続き、積極策が裏目に出た。

日本郵政は2015年に約6200億円を投じて、豪物流会社「トール・ホールディングス」を買収した。完全子会社の日本郵便を通じて同社の全株式を保有している。日本郵政はトールの買収を通じ、手薄だった企業間の物流事業を強化しつつ、アジア太平洋地域を中心とした国際的な物流企業になるという成長戦略を描いていた。
買収先の純資産と買収価格の差が、帳簿上「のれん代」として計上されるが、トールののれん代は16年末で4000億円近く残っている。トール自体がM&A(合併・買収)を繰り返して成長した企業だったため、その分も加算されてのれん代が膨らんだ。
日本郵政は毎年、段階的にのれん代を償却処理していく計画だったが、想定が狂った。日本郵便と事業上の相乗効果が思ったようには生まれず、資源価格の下落によってオーストラリアの景気も低迷したことなどから、トールが計画通りの利益を出せない状況になっていた。トールの16年4~12月期の営業利益は66億円。15年は7~12月期の変則決算にもかかわらず166億円の営業利益を出しており、業績は大きく悪化している。
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