原子力事業で7125億円の損失を計上し、東芝が昨年末に債務超過に転落していた。難航する工事を制御できると思い込んだ結果、先が見えない「無限責任」に苦しめられる。巨額の債務保証があるため原発建設からは抜けられない。経営危機はこれからが本番だ。

(写真=竹井 俊晴)
(写真=竹井 俊晴)

 2016年5月26日、東芝の原子力事業を“底なし沼”に突き落とす文書を、米スキャナ電力が公開した。

 「固定価格オプションが発動すれば契約が変更され、プロジェクトの残りのコストが確定する」──。スキャナ電力が発注し、東芝の米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)がサウスカロライナ州で建設中の「VCサマー2・3号機」について、一定額以上のコスト負担を拒否するという内容だ。

 11月に米規制当局が承認し、オプションが発動した。建設工事コストが約77億ドル(約8700億円)を超えたら、超過分はスキャナ電力ではなくWHが支払う。東芝原子力部門の元幹部は「契約変更で、WHは“無限責任”を負わされることになった」と天を仰ぐ。

 原子力事業の失敗が、東芝を存亡の危機に追い込んでいる。同社は2017年2月14日、WHが米国で建設中の4基の原発について、建設コストが当初想定より「61億ドル(約6900億円)」も増加したと発表。これを含め、7125億円を減損損失として計上する。結果、2016年末時点で自己資本は1912億円のマイナスに転落。事業売却などの手を打たなければ、今年3月末時点でも1500億円の債務超過になるという。

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