3年続く因縁の対決

 歴史を振り返れば、3年前まで、時価総額ではキリンがトップを走り続けてきた。2001年に、ビール類の国内シェアトップの座をアサヒに譲った後も、医薬品を含めて多角化に先行し、海外事業もいち早く展開。ピーク時の時価総額は2兆7000億円を超えていた。

 アサヒは1987年発売の主力ビール「スーパードライ」の販売を伸ばし続けて、業界でも傑出した経営効率をたたき出すようになった。だが長い間、時価総額は1兆円前後で推移していた。

 2社が1949年に上場してから、時価総額でアサヒがキリンを初めて逆転したのは2014年1月だった。アサヒが堅調なビールのほか、買収したカルピスの飲料販売が好調で収益を伸ばしたからだ。対するキリンは国内のビール「一番搾り」の販売が振るわなかったほか、鳴り物入りで進めた、ブラジルやオーストラリア企業のM&A(合併・買収)が裏目に出た。アサヒが逆転できたのは、キリンの「敵失」という面も大きい。

 その後、数カ月は抜いたり抜かれたりを繰り返していたが、キリンが国内外で改革にもたつく中、次第にアサヒがキリンを引き離していった。

 キリンの転機になったのが2015年3月。ブラジル事業の巨額買収など、拡大路線を担ってきた三宅占二氏が社長を退き、磯崎氏が後任に就いて、リストラに乗り出したからだ。

キリンの磯崎功典社長は低採算事業の改革とアジア展開を進める(写真=的野 弘路)

 磯崎氏は経営企画担当としてリストラに取り組んだ過去の実績から、社内では「コストカッター」と評されることもあるほど、事業の構造改革が得意分野だ。2016~18年度の中期経営計画で、総花的な拡大戦略を進めた過去の経営からの決別を宣言。国内清涼飲料とブラジル事業を「低収益事業」と位置付けて、コスト削減や減損処理など、思い切った策を矢継ぎ早に進めた。

 一連の改革で収益が上向き始めたことが評価されて、株価が上昇し、キリンは昨年7月、時価総額で2年1カ月ぶりにアサヒから、ビール業界首位の座を奪った。だがトップに立てたのは、ほんの一瞬。いくらトップが「剛腕」を振るっても、企業価値を一朝一夕に回復させることはできないのだ。