トランプ大統領による米国での生産や雇用の拡大圧力におびえる日系自動車メーカー。政治の陰に隠れたより深刻なリスクがある。それが大黒柱の米市場における販売減速だ。各社は販売奨励金の拡大で台数を伸ばしているが、競争激化は既に利益をむしばんでいる。

米国の自動車販売店では販売奨励金を原資にした値引き競争が激化している(写真=Justin Sullivan/Getty Images)

 米カリフォルニア州サンノゼに自動車販売店が軒を連ねる地域がある。2月中旬、その一角にある日産自動車の販売店で“安売り”が繰り広げられていた。

 「どんなクルマをお探しですか」。40代の男性顧客は店舗に入るや否や、営業マンにこう声を掛けられた。「買い替えで『ムラーノ』を検討している」。男性がこう返すと、営業マンはにっこりと笑い、こう教えてくれた。「今ならかなりのディスカウントが可能です」。

 営業マンが提示した価格はこうだ。SUV(多目的スポーツ車)「ムラーノ」のメーカー希望小売価格は3万4569ドル(約390万円)。それを店頭表示価格として3万2970ドルまで値引く。加えて提携する小売店「コストコ」会員なら500ドル、さらにキャッシュバック(現金還元)として2500ドルの合計3000ドルの割引が受けられるため、最終的に2万9970ドルで買える計算だ。

 カタログ価格との差額は日本円換算で合計52万円にもなる。営業マンによれば、今月に入ってキャッシュバックを500ドル積み増したという。ムラーノは米国で人気の大型SUV。販売店がここまで値引きするのは驚きだ。

 もちろん日産だけではない。「どのメーカーの販売店も追加の値引きをアピールしている。今年に入って実質的な値引き幅を5割以上拡大した車種もある」。ある日系自動車メーカーの米国駐在員はこう打ち明ける。