「口先介入」への警戒強く

 「北米の状況を注視しつつ、変化があれば柔軟に対応していきたい」

 3日の決算記者会見で、ホンダの倉石誠司副社長執行役員は険しい表情でこう述べた。同社は新型「シビック」やSUV(多目的スポーツ車)が北米を中心に販売好調。これまで国内同業に比べ業績拡大が遅れてきたが、ようやく軌道に乗ってきたという印象だ。

車・電機は控えめな通期予想が目立つ
●主要企業の経常利益進捗率
注:ホンダ、トヨタ、日本電産は税引き前利益。日立製作所は継続事業税引き前利益

 今期の税引き前利益は9250億円と従来予想から1550億円引き上げた。昨年4~12月に稼いだ利益は8199億円。通期予想に対し、すでに稼いだ利益の割合を示す進捗率は89%だ。

 3月期決算企業が第3四半期まで(4~12月)を終えた際、季節性要因を除くと利益の進捗率は75%付近となるはず。日本企業は業績予想を低めに見積もる傾向があり、実際の進捗率は70%台後半に集中するが、それにしても89%は高い。ホンダは控えめな業績予想をしていると言える。

 最大の理由はトランプ大統領の存在だろう。メキシコから輸入する自動車に対し「35%の関税をかける」と発言しており、同国に工場を持つホンダは「関税をかけられたら対応しなくてはならない」(倉石副社長)。

(写真=共同通信)

 さらにここにきてトランプ大統領は日本の自動車市場は閉鎖的だとする主張を強めている。これを受けトヨタ自動車の豊田章男社長は6億ドル(約670億円)を投じ米インディアナ州にある工場の設備拡大を表明したが、他社もこのような口先介入への対応を迫られる可能性がある。

 通期予想を控えめに出すのはホンダばかりではない。トヨタ自動車85%、マツダ87%──。自動車業界で「進捗率80%企業」が続出している。目を転じれば、こうした傾向は他の業界でも広がっている。

 原因は為替相場に対するトランプ大統領の発言だ。決算発表シーズンまっただ中の1月31日、同大統領は「中国や日本は何年も市場で通貨安誘導を繰り広げ、米国はばかを見ている」と日本を名指しで批判した。

 これに対して菅義偉官房長官が記者会見で「金融緩和は物価安定目標のためで、円安誘導を目的としたものではない」と反論したが、この応酬に為替市場が反応し、円相場が一時1ドル112円台前半と約2カ月ぶりの水準まで円高・ドル安となる場面があった。

トランプ発言で為替相場は不安定な値動きに
●対ドルの円相場の推移