経営危機に瀕していたシャープの業績が、今年度下期から急速に上向いている。裏には、シャープを買収した鴻海精密工業のしたたかな戦略があった。韓国サムスン電子が送りつけた仲裁申立書から、シャープの業績回復のからくりが見えてきた。

サムスンへの供給停止は突然決まった
●サムスンがシャープなどに送った仲裁申立書の内容(一部抜粋)
(写真=人物:伊藤 真吾/アフロ、背景:長田 洋平/アフロ)

 「V字回復して遅くとも2018年度に東証1部への復帰を目指す」

 台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業からシャープ立て直しのために送り込まれた戴正呉社長は昨年11月1日、全社員に対し、自信に満ちた社内メッセージを発信した。

 戴社長の自信には根拠があった。同日の決算発表で、2017年3月期の連結営業損益が257億円の黒字になることが明らかになったからだ。営業損益の黒字転換は実に3年ぶり。上期はトントンだったが、下期が256億円の黒字になる見通しで、「V字回復」が夢物語ではないことを数字が示している。

 戴社長は、鴻海との協業による調達・物流のコストダウン効果を主な理由に挙げる。だが、地道な改革だけで業績が上向いたわけではない。ライバル企業である韓国のサムスン電子がシャープなど3社を相手に、4億2900万ドル(約490億円)以上の損害賠償とパネル供給再開を求めて起こした仲裁申し立て。それを読むとシャープのV字回復に向けた鴻海の強力な肩入れが浮かぶ。