4年目官製春闘のベア実現度

 トヨタは2015年、政権の強い要請を受ける形でベア4000円を回答した。大盤振る舞いにつられ、グループのアイシン精機やデンソーなどが当初予定していた回答額を引き上げた。しかし2016年は一転、1500円を回答。今度は安倍政権が不快感を隠さなかった。

 そんな経緯を踏まえ、今年の春季労使交渉はどう進むのか。トヨタグループの労働組合で作る全トヨタ労働組合連合会は月額3000円以上を統一要求として掲げ、一時金も昨年と同水準である「年間5カ月以上」に設定した。

 全トヨタ労連の佐々木龍也会長は13日の記者会見で「経営環境は厳しいが、単年度の収益だけでは判断しない。グループ内格差の是正を重視した」と述べた。

 カギを握るのは業績だろう。昨年11月に発表した2017年3月期の業績見通しは売上高が前期比8.5%減の26兆円、純利益は同33%減の1兆5500億円。営業利益の見通しは従来予想よりも1000億円上積みして1兆7000億円としたが、これも同40.4%減だ。

 しかし、その想定為替レートは1ドル=103円。足元の為替相場はこれよりも円安で推移しており、業績は上振れする可能性が高い。これが春季労使交渉の行方を左右する。

 「日本企業の問題点は、経営が厳しくなるとコスト削減に逃げて構造改革が遅れること。ベアは消費拡大効果のみならず、企業構造改革を進めるドライバーとしての意味が大きい」と日本総合研究所の山田久チーフエコノミストは指摘する。

 政権が経営側に賃上げを求める「官製春闘」は今年で4年目に入った。経済界からは「市場原理をゆがめる」などといった批判が繰り返されているが、安倍政権が手を緩める様子はない。

 国内消費の弱さが景気回復のボトルネックとなっている状況が依然として続いているためだ。その重要な指標となる実質賃金指数は2016年に入ってようやく前月比プラスになる月が増えてきたが、消費の拡大につながるような水準ではない。衆院解散も視野に入る中、賃上げを通じた消費の回復は何としても実現したいところ。

 このため政権は高水準のベアに期待を寄せるが、財界関係者の一人はこう語る。「2015年にトヨタグループは大幅な賃上げを実施した。政権はその流れが全体に波及すれば消費は上向くと見ていたが、実際には思い通りの展開にはならなかった」。トヨタの回答は例年以上に注目を集めそうだ。