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新年を東京拘置所で迎えた日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏。容疑を否認し、徹底抗戦の構えをみせる。今後の公判でカギを握るのが検察当局が司法取引で得たとみられる日産社員からの供述内容だ。一方、司法取引が不祥事対応の「道具」になる点も見逃せない。あなたの会社も向き合うときが来るかもしれない。

ゴーン氏は公判の場で徹底抗戦の構えをみせる(写真=共同通信)

 1月8日、勾留理由開示の手続きで東京地裁に出廷し、「容疑はいわれなきもの」と主張したカルロス・ゴーン氏。報酬虚偽記載に関わった2人の日産社員が司法取引に応じたことが、ゴーン氏と側近のグレッグ・ケリー氏の逮捕(ケリー氏は昨年12月25日に保釈)につながったとされる。

 司法取引は昨年6月に導入されたばかり。被疑者・被告が、共犯者など他人の刑事事件の解明に役立つ情報を提供すれば、検察側がその見返りに不起訴にしたり、求刑を軽くしたりする。贈収賄や脱税、談合、カルテル、粉飾決算などの特定の財政経済犯罪と薬物銃器犯罪を対象に弁護人の立ち合いの下で交わすことができる。

(写真=共同通信)

首謀者の責任を追及

 司法取引が最初に使われたのは昨年7月にタイ公務員への贈賄の罪で三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の元役員ら3人が起訴された事件。会社側が免罪となり、「トカゲのしっぽ切り」との批判も出た。2件目となる今回は企業犯罪や組織犯罪における首謀者の責任を追及するという「司法取引で想定された使われ方に近い案件」(リスクマネジメントに詳しい竹内朗弁護士)と評される。

 ゴーン氏という大物経営者の逮捕とあって「企業法務担当者のみならず、経営層の関心も高まっている」と司法取引セミナーなどを開催するKMPGコンサルティングの水戸貴之シニアマネジャーは指摘する。「不祥事対応のツールとして、現実的な選択肢の一つになった」と竹内弁護士も話す。

 では、実際に企業はどう司法取引と向き合うべきなのか。

日経ビジネス2019年1月14日号 12~13ページより目次